台湾の半導体製造大手、TSMCが熊本に新工場 緊張高まる台中対立で地政学リスクの分散狙う

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TSMC、日本進出の狙い

   進出するTSMCの狙いはどこにあるのか――。その半導体生産の9割以上が台湾に集中。膨大な人材と、成熟した供給網により効率的に運営してきたが、ここにきて米中対立に加え、中台間の緊張も高まり、特に米国は半導体をはじめ、ハイテクの供給網が台湾に依存するリスクに敏感になっている。

   そんな米国の意向も受け、6月に、台湾以外で最も先進的な工場を米アリゾナ州に着工している。日本への進出も、地域分散による地政学的リスク回避するとともに、ユーザーの近くで供給体制を拡充し、販路を広げるのが目的だ。

   とはいえ、そろばん勘定はきっちりしている。TSMCの魏哲家・最高経営責任者は日本進出を発表した10月14日の会見で、「私たちは顧客と日本政府の両方からプロジェクトの支援について強いコミットメント(約束)を受け取っている」と語った。

   その夜、わざわざ会見した岸田文雄首相は「我が国の半導体産業の不可欠性と自律性が向上し、経済安全保障に大きく寄与することが期待される」と述べ、一企業の誘致を「手柄」として誇示し、支援していく姿勢を示唆した。

   日本としても、TSMCの誘致は是が非でも実現したい課題だった。政府は6月、「半導体・デジタル産業戦略」を策定し、「国家事業として取り組む」と宣言。世界各国も兆円単位の資金を投じて自国企業の育成や外資誘致に動いており、これに対抗していく姿勢を鮮明にしたもので、TSMC誘致は、その第1歩。萩生田光一経産相は15日、「他国に匹敵する措置を講じるべく、複数年にわたる支援の枠組みを構築したい」と予算を確保する考えを示した。

   具体的に今回の工場新設には1兆円規模が必要とされ、政府は国内企業への一定量の半導体供給を条件に財政支援する考えで、支出規模は半分の5000億円程度になるとの見方が一般的だ。総選挙後に編成される予定の21年度補正予算に一部を盛り込む考えだ。

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