「冷凍術」でおいしい料理が手軽にできる!? そのテクニックを伝授【食品のムダをなくす一冊】

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   10月は「食品ロス月間」。冷蔵庫の活用術や、食材やお料理の節約術、最新の農業事情などをテーマにした本を随時、紹介していこう。

   食材を保存しようとして冷凍庫に入れたのはいいが、忘れてしまい、結局捨てる羽目になってしまったという経験はないだろうか。本書「決定版 感動の冷凍術」は、「なんとなく冷凍する」のではなく、積極的に冷凍することによって、フードロスを防ぎ、なおかつおいしさと栄養をキープするという「攻め」の冷凍術を説いた本だ。

「ぐぐっと時短&もっと絶品! 決定版 感動の冷凍術」(西川剛史著)宝島社
  • 冷凍術でおいしいオードブルも手軽に料理できるかも……
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食品の冷凍術は進化している

   著者の西川剛史さんは、冷凍生活アドバイザー・野菜ソムリエプロ。大学在学中から冷凍食品に興味を持ち、大学卒業後、冷凍食品会社に就職。商品開発などの経験を生かし、現在は冷凍の専門家として活動する。2016年から、家庭での冷凍テクニックを理論的・体系的に学べる資格講座として「冷凍生活アドバイザー養成講座」を開講している。

   西川さんは、冷凍術は日々進化していると言い、そのメリットを3つ挙げている。

1 調理時間がグッと短くなる まとめて下ごしらえして冷凍することで、調理の手間が省けて時短になる
2 まとめ買い&フードロスを防いで節約できる 節約にもなり、環境にもやさしい生活を送れる
3 おいしさ&食感&栄養をキープする 冷凍によって食べものの変性を止めて、風味や栄養を守る。また、きのこのグアニル酸やしじみのオルチニンが増加して、栄養やおいしさがアップする

   具体的なレシピもたくさん載っているが、その前に冷凍の基本ルールやテクニックを紹介している。まずは4つの基本ルールから。

1 新鮮&おいしい状態で冷凍する 余ったから冷凍するはNG
2 できるだけ空気を遮断する 乾燥と酸化を防ぐために、ジッパーつき保存袋やラップを使って食材を空気から遮断する
3 できるだけ早く冷やす なるべく平らに広げて素早く冷凍する
4 同じカットサイズにそろえる 均一にムラなく冷凍するために、同じカットサイズにそろえる。調理時にもムラなく解凍・加熱できる

   解凍にも6つのテクニックがあるという。「加熱解凍」は、野菜や貝類に向く。「氷水解凍」は生の肉や魚などに向く。「流水解凍」は生の肉や魚以外の多くの食品に向く。「冷蔵庫解凍」は多くの食品に向く。「常温解凍」はパン、和菓子、冷凍枝豆などに向く。また凍ったまま食べるのは一部の野菜やフルーツなどに向いている。

   冷凍した後も、食材の状態はゆるやかに変化する。以下の3つの約束を守るようにしよう。

使うことを考えて冷凍する
期限を決めて冷凍して積極的に食べる 基本的には1か月以内に食べ切るのが目安
冷凍庫の温度を上げないようにする

オススメは「下味冷凍」テクニック!

   冷凍中に調味する「下味冷凍」のテクニックがオススメだ。あらかじめ食材に下味をつけてから冷凍する方法だ。調味液でコーティングすることで、冷凍時の乾燥と酸化を防げる、味が染み込みやすい、調理時間が短縮できるなどのメリットがある。

   みりんやはちみつなど糖分を含んでいる調味液やオリーブオイルなど油分を含んでいる調味液を使うのがコツだ。

   たくさんのレシピを紹介しているが、もっとも出番が多いと思ったのは、「鶏肉のかんたん下味冷凍」だ。材料は鶏もも肉1枚(250グラム)。鶏肉の表面についている水分をペーパータオルでふき取る。鶏肉の表面にフォークを1センチ間隔に刺して穴をあけてから、両面にまんべんなく塩をふる。保存袋に鶏肉を入れ、オリーブオイル(大さじ1)を加えて全体になじませながら空気を抜き、なるべく平らに広げて冷凍する。解凍して焼けば、照り焼きになる。

   豚ロース肉にしょうゆとしょうがを加えて冷凍したものや、さばに薄く塩をふって冷凍したもの、野菜もきゅうりやだいおんに塩と酢を加えて冷凍したものがお勧めだ。

   食感を変えるための冷凍術もある。豆腐や卵、こんにゃく、しらたきは冷凍することによって食感が変わり、楽しめる。

   本書を読むうちに、自分がいかに食材をダメにしているかを痛感した。肉はその日に使う分を除いて、残りはすぐに冷凍する。丸ごとの生魚は真水に魚全体を漬け、氷漬けにして冷凍すれば鮮度を保つことができる、などの項目を読み、反省することしきりだった。

   読み終えてから、我が家の冷凍庫に立ち向かった。いつ冷凍したのか分からない食材ばかりだ。迷うことなく、すべて処分した。

   「食品ロス月間」ということで、関連書を取り上げたが、結果的に食品ロスを出してしまうことになった。だが、これからは食品ロスを出さないと誓った。賢く冷凍すれば、食品ロスはなくなる。野菜の冷凍術がもっとも役に立ちそうだ。(渡辺淳悦)

「ぐぐっと時短&もっと絶品! 決定版 感動の冷凍術」
西川剛史著
宝島社
990円(税込)

 
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