株価3万円回復は来年以降に持ち越す?
さらに井出氏が問題視するのは、これから本格化する企業の2022年3月期中間決算と株式市場の反応だ。
「多くの企業が業績見通しを引き上げると想定されるものの、引き上げ幅が市場の期待に届かず、株価が下落するケースが相次ぐ可能性が高まっている」
と指摘する。
こうした事態にアナリストたちの「予想」も暗いものになっている。それを示唆するのが「リビジョン・インデックス」の動きだ。証券アナリストの企業の業績見通しがどのように変化しているかを指数化した。
アナリストの予想が上方修正した企業数の比率から、下方修正された企業数の比率を差し引いて算出される。プラスが大きいと、全体的に上方修正の勢いが高まっており、マイナスが大きいと逆になる。景況感を示す格好の指標となっている。
井出氏はこう続ける。
「世界的な景気回復を受けて8月までは上方修正が優勢だったものの、9月以降、リビジョン・インデックスが急速に低下した。内訳をみると上方修正が減っただけでなく下方修正が増えており、よりネガティブな内容だ=図表2参照。米国でも物価高騰が深刻化してきた。特に、日本と違って消費者物価も高騰していることは、FRBの政策変更に影響しうるため注意が必要だ。FRBは量的緩和の縮小(テーパリング)開始を11月にも決定する見込みで、これは既定路線になっている。
問題は利上げ開始時期と利上げペースが早まる可能性だ。株式市場では『22年末~23年初頭に1回目の利上げ』がコンセンサスとなっている。だが、仮に米消費者物価が騰勢を強めることがあれば、『利上げ前倒し観測』が市場で浮上するかもしれない。その場合、高値圏にある米国株は急落、日本株も悪影響を受けるだろう」
そして、こう結んでいる。
「たとえ世界的な物価高騰がひと段落し、スタグフレーション(景気停滞と物価上昇が同時進行する状況)は回避できたとしても、半導体などの供給制約が直ちに解消する見込みは少ない。OECD(経済協力開発機構)やIMF(国際通貨基金)は経済成長率の見通しを引き下げた。経済ファンダメンタルズの減速モードが鮮明となった以上、日経平均株価の3万円回復は来年以降に持ち越す可能性が高まっている」
(福田和郎)