新しいアイデアを出したい、商品改良はどうすればいいかと悩んでいる人の参考になりそうなのが、本書「リ・デザイン思考法」である。
「宇宙開発から生まれた発想ツール」という副題に引かれて読んでみたら、広く一般的に応用できる発想法であることがわかった。
「リ・デザイン思考法」(山方健士・湊宣明著)実務教育出版
システムを「構成要素」に分けていく
2人の著者は実際にJAXA(宇宙航空研究開発機構)で宇宙開発に従事した人たちだ。山方健士さんはJAXAヒューストン事務所所長代理。雑誌「モーニング」で連載中の「宇宙兄弟」の監修もしている。湊宣明さんはJAXAを経て、現在は立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科教授。
この発想法は、山方さんが宇宙服の開発に取り組み、失敗した経験から生まれたという。だが研究は、ある企業が熱中症対策の冷却下着を開発するのに転用された。一連の発想法をJAXA同期入社の湊さんが体系化し、民間企業の協力を得て、実際の商品開発に取り入れた経緯を紹介している。
宇宙開発とは、まだ存在しないモノを作る仕事だという。またチーム単位で開発を進めるため、目標とプロセスを「見える化」することが求められる。何より、全体をシステムとして捉え、システムを「構成要素」に分けていくアプローチを取る。
要素分解の考え方を理解するため、本書ではハンバーガーを分解して説明している。ハンバーガーはバンズ、野菜、パティ、チーズ、ソースからなる本体と包み紙、袋、ナプキンに分解される。さらに野菜はトマト、ピクルス、オニオン、レタスに、ソースはケチャップとマスタードに分解される。
次に、構成要素から機能と目的を考える。たとえばバンズなら、「具材を挟む」機能があり、ユーザーの目的としては「まとめて、手軽に食べる」→「素早く食べる」といった具合だ。
これらの分解結果を階層図にまとめることにより、分析対象について俯瞰的かつ体系的な理解が可能になる。 要素分解的思考のメリットとして、考えるべきことが明確になる、足りない知識やスキルを特定できる、階層ごとに情報を整理できることを挙げている。