銅にニッケル... エネルギーだけで済まない価格高騰
ところが、そこに風力発電の不調がやってきました。欧州では想定以上に風が吹かず、発電のため天然ガスを急遽調達しなければなりませんでした。そのため、天然ガスの値段は瞬時に6倍となりました。欧州エネルギー政策の失敗です。
通常、原油のほうが天然ガスより価格は高いのですが、6倍となると原油換算で1バレル140ドル程度、代替性のある原油への需要が高まっています。原油価格は現状80ドル台ですが、さらに上昇しそうです。
少し前であれば、米シェールオイルが増産され、原油価格は落ち着きました。しかし、米国が環境を重視するバイデン政権となり、シェールオイルの生産には事実上の制限がかかっています。シェールの増産が止まっていることで、原油の価格決定権はOPEC(石油輸出国機構)プラスに移っているといえます。
OPECプラスは、事実上サウジアラビアとロシアによって価格が決定されています。天然ガスは世界最大の生産国であるロシアの影響力が強い。つまり、原油・天然ガスともにプーチン大統領が価格決定権を握っているという状況なのです。
OPECプラスはコロナ禍後にかなり減産しました。その意味では、増産余力はかなりあります。参加国が一斉に増産に動けば、原油価格はいくら需要が強くても落ちるでしょう。しかし、そうした状況をサウジとロシアが容認するとは思えません。少々増産するより、価格維持に動くでしょう。
再生可能エネルギーシフトが続くことから、世界のエネルギー需要は混乱するでしょう。冬場になれば天然ガスへの需要が高まり価格が高騰する、そうしたことが今後何年も続きそうです。
エネルギーを100%輸入に頼る日本経済にとって、エネルギー価格上昇は打撃でしかありません。強制的に税金を産油国に払っているようなものです。エネルギー価格だけならまだしも、銅やニッケルなどの需要も今後高まり、資源価格全般が高騰するでしょう。
円はかなり安い。現状の114円台は、購買力平価の推移を考慮すると、すでに6年前の125円レベルと同じ程度です。それでも、資源価格の上昇で交易条件は悪化、資源価格上昇=貿易赤字の拡大で、円安圧力がさらに高まることになります。しかも、その資源価格の決定権がプーチン大統領にあります。
簡単に資源価格は下落しないでしょう。円安局面が続くことになります。安い円がさらに安くなります。
(志摩力男)