習近平氏は「第2の文化大革命」を狙っている?
習近平主席は、いったい何を目指しているのか――。
中国共産党政治局会議は10月18日、11月に結党100年の歴史会議を開き、「歴史決議」を審議すると決めた。中国共産党が「歴史決議」を行うのは過去2回しかない。1回目は1945年、建国の父・毛沢東が過去の政治・軍事の教訓をまとめた。2回目は1981年、改革開放路線を進めた鄧小平が、毛沢東が発動した文化大革命を否定した。3回目の来年は習氏の「新時代」の路線を発表するとみられている。
習近平氏は、第2の毛沢東を夢見て「第2文化大革命」を目指しているのではないか、と指摘するのは中島精也・福井県立大学客員教授だ。Webコラム「世界経済評論IMPACT」(10月18日付)の中の「習近平思想は第2次文化大革命」で、こう述べている。
「来年の中国共産党大会で総書記3期目を目指す習近平の露骨な権力集中の動きが顕著だ。習近平が唱える『中国の夢』とは『中華民族の偉大な復興』であるが、個人的な『習近平の夢』は『建国の父』毛沢東と同等の絶対的地位に上り詰めることである。習近平が特に力を入れているのが思想教育の徹底であり、『習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想』を中華民族の偉大な復興に向けた行動指針と位置づけている。
新時代の矛盾として格差、政治腐敗、風紀の乱れに直面している。これら矛盾解消のために行き過ぎた市場経済、即ち鄧小平の『改革開放』路線を否定し、社会主義国家建設の初心に立ち返ることを習近平は重視している。小中学校の推薦図書から西洋思想を崇拝する書籍が排除され,アメリカ資本主義の象徴とも言えるIT長者ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズの伝記本が対象となっている。
習近平思想の中で愛国心教育や個人崇拝と並んで注目されるのが『共同富裕』の主張である。昨年11月アリババ傘下のアントグループが香港と上海で予定して上場が突然、当局より停止命令を受けた。アリババ創業者のジャック・マー氏が中国の金融システムは時代遅れと当局批判を行なったことへの報復とみられるが、IT企業の隆盛で格差が広がったことを重視して,反社会主義的な大企業の活動を規制する方向に舵を切った」
こうした習氏の姿勢と性格が中島精也教授には、「毛沢東の文化大革命を彷彿させるものがある」という。
本当に「第2の文化大革命」が起これば、「リーマン・ショック」の再来どころではないが......。しかし、中島精也教授はこう付け加えることは忘れない。
「ただし、王岐山国家副主席や劉鶴副首相らの習近平側近は習近平治世のもとでは第2次文化大革命を支える役割を果たしているが、文革の危うさも熟知しており、習近平の暴走には一定のブレーキ役を果たすことも期待される。よって、文革のような無秩序な社会混乱に進展する可能性は小さく、習近平の第2次文革はある程度制御された形で進行するものと予想される」
ひとまずは、最悪の事態は避けられそうということか。
(福田和郎)