「長期間痛むよりも短期間の痛みのほうがましだ」
また、ロイター(10月18日付)「コラム:中国経済の失速、世界への影響長期化も」で、香港駐在のYawen Chen記者もこう伝えている。
「中国には『長痛不如短痛』(長期間痛みを味わうより一瞬の痛みのほうがまし)という言い回しがあるが、中国の影響力の大きさを踏まえると、第3四半期国内総生産(GDP)成長率の4.9%への想定以上の鈍化は一瞬の痛みでは済まず、世界中に影響が広がることになるだろう。
同時進行の複合的要因が景気の大幅減速を招いたわけだが、習近平国家主席が進める社会の格差や非効率な成長を是正するための政策は、長期的に中国への依存度が高い市場に響くとみられる。習主席は先週、共産党の理論誌『求是』に公表した論文で、格差が是正されない場合の悲惨な結末について警告し、固定資産税導入に向けた法案を進めるべきだと呼び掛けた。消費税の適用範囲拡大も求めた」
新型コロナウイルスの感染拡大によって、中国では現在、消費が冷え込んでいることが経済の減速を招いているが、それなのに購買力のある富裕層への課税をさらに強めようというわけだ。ロイターの通信のYawen Chen記者はこう結んでいる。
「これらの方針が実現すれば中国の年間2兆ドル(230兆円)にものぼる外国のモノとサービスへの需要がリスクにさらされることになる。ゴールドマン・サックスは住宅着工が30%減少すれば2022年の経済成長率を4%ポイント押し下げると試算する。
中国の建設業界や金属消費に影響を受けやすいチリやオーストラリアなどの貿易相手国は即座に痛みを受けることになる。賃金の低迷と増税の組み合わせは『ルイ・ヴィトン』を手掛ける仏LVMHといったファッション大手にも打撃を与える。株式相場が調整局面に入れば、2015年の世界同時株安のように、世界的に波及する可能性がある。そろそろ心の準備が必要なようだ」
ブルームバーグ通信(10月18日付)も「中国経済、7~9月に減速 -不動産低迷やエネルギー危機が打撃」で、悲観的な見通しをこう伝えた。
「中国の国家統計局が発表した7~9月国内総生産(GDP)は前年同期比4.9%増だったが、ブルームバーグ調査のエコノミスト予想中央値は5%増だった。中国政府による不動産市場の規制強化で建設活動が抑制されるとともに、不動産開発大手、中国恒大集団の債務危機が一段と深刻になり他のデベロッパーにも波及。不動産販売の不振を招いている。9月には電力が不足し、製造業は生産抑制や操業停止を余儀なくされた。
バンク・オブ・アメリカの大中華圏担当チーフエコノミスト、喬虹氏はブルームバーグとのインタビューで、『需要関連の投資はかなり弱く、電力不足による供給サイドへの影響も非常に深刻だ』と述べ、10~12月の成長率は3~4%に低下する公算が大きいと予想した」