貿易赤字は円安要因、国内物価の上昇につながる
貿易赤字の影響について述べる。貿易を行えば、決済が発生する。そのほとんどは米ドルによって行われるため、輸出ではドルでの受け取り、輸入ではドルでの支払いが発生する。
貿易黒字は輸出が輸入を上回っている状態なので、ドルでの受け取りが多くなり、これを円に換えるためのドル売り・円買いが行われ、円高要因になる。そして、GDP(国内総生産)の押上げ効果となる。
一方、貿易赤字は輸入が多くなるので、ドルでの支払いのため、ドル買い・円売りが行われ、円安要因となり、GDPの押し下げ要因となる。
このところのドル高・円安の動きの背景には、米国の金融政策の正常化への動きによる長期金利の上昇で、日米の金利差によるドル買い・円売りの動きに加えて、日本の貿易赤字への転落がある。
円安はこれまで、たとえば1ドル=100円で買えていた外国製品を1ドル=110円で買うことになるため、輸入物価の上昇につながり、国内物価の上昇につながる。前述のように、日本の貿易構造は輸入数量が減少しにくく、輸出数量が増加しにくい状態となっていることや、日米の金利差が縮小するメドがないため、当分は円安圧力がかかりやすい状況が続くだろう。