「古書すからべ」は、東京・神田神保町のすずらん通りの清田ビル2階にある。仄暗い雰囲気の階段を昇り、ドアを開けると、書棚の隙間にできた細い廊下の先に明かりが見える。
真っ直ぐに進むと、まるで書斎のようなスペースにたどり着く。部屋を半分に区切るように置かれた大きな机、向かいの光風館ビルの美しく施された装飾が見える窓の手前にはミロのヴィーナスのレプリカ像が置かれている。
本棚の隙間にちょこちょこ顔を覗かせる置き物たちは土産物なのだろうか。2台のベースや動物の剥製、部屋の中に置かれた気になるものばかりである。そんな「古書すからべ」は、主にフランス語の原書を扱う店だ。現在はコロナ禍の影響もあり、基本的には事務所営業としている。店主の大谷仁さんにお話をうかがった。
昆虫と古本好きの主人がつけた店名「フンコロガシ」
幼いころは昆虫と古書が大好きな少年だったと言う。神保町近辺の中学校に通っていたこともあり、少年時代から古書は身近で、夢中になれる娯楽だった。
昆虫好きになるきっかけも本で、『ファーブル昆虫記』を繰り返し読んだという。
「『すからべ』という店名は、昆虫のフンコロガシのフランス語名からとりました。フンコロガシのことを語らせると長くなりますよ」
とニヤリ。
本棚の一角を占めるフンコロガシの置き物や絵を見せてくれた。大谷さんのフンコロガシ好きは有名のようで、置き物の多くが知人からプレゼントされたものらしい。