市場はインフレ警戒でピリピリ(慶応義塾大学 2G)
FX大学対抗戦20週目。大学の授業が本格的に始まり、生活のサイクルが大きく変わり始めた。今学期もオンラインでの受講がメインだが、その分課題が多くなると考えられる。
結論から言うと、今週(10月4日週)は取引をしなかった。来週以降に備えて、今回も今週の流れと今後の動きを整理したい。
◆ 今週(10月4日週)の流れ4日からの週は、インフレ警戒がキーワードとなり、市場が神経質に動いた。原油相場が急伸し、米ニューヨーク原油先物が1バレル=80ドルに迫る動きをみせた。急速なエネルギー価格の上昇がインフレ警戒を高め、米国債とはじめとした主要国の債券利回りが上昇。株式市場に調整圧力が広がるなかで、ドル買いが先行した。
先週来の中国不動産大手、恒大集団の巨額債務問題が未解決のまま続いていることに加えて、米国では債務上限問題も市場の不安材料となった。株安とともにリスク回避の円買い圧力も広がった。
しかし、週後半には米債務上限について米民主党と共和党が暫定的に引き上げで合意。プーチン露大統領がエネルギー市場の安定を支援する用意と表明、原油高や株安が一服した。リスク回避の動き巻き返しが入り、ドル円やクロス円が上昇。ドル相場も一方的な上昇は落ち着いた。
そして、週末には注目の9月の米雇用統計が発表された。雇用増が予想を大きく下回るネガティブサプライズとなり、発表後はドル売りが入った。しかし、このドル売りが限定的なものにとどまったことで、その後はドル買いが優勢に。ドル円は112円台前半へ上昇。ロンドン市場午前の高値を超えると、先月末に付けた直近高値も超えて、年初来高値を更新した。
◆ 今後の動き先週末の米雇用統計(9月)で非農業部門雇用者数は、予想をはるかに下回る低い伸びとなった。2か月続けて事前予想値から大きく下方向に乖離する状況だ。弱いといわれた8月分の数字(速報時点で23万5000人増、36万6000人増に上方修正)をも下回る19万4000人増という結果に、市場はいったんドル売りで反応するなど、大きなサプライズとなった。
米連邦準備制度理事会(FRB)の2大命題である雇用の最大化と物価のターゲット付近での安定のうち、雇用についてはここ2回続けてやや残念な伸びになっており、物価が安定するようだと緩和姿勢の維持のハードルが下がるが、直近の物価高が続くようだとFRBに引き締めを求める動きが強まると考えられる。
こうしたなか、13日に9月の米消費者物価指数(CPI)が発表される。米国のインフレターゲットの対象はPCEデフレータだが、計測が煩雑ということもあり発表がかなり遅くなっている。同系統の指標で変化の傾向も似通る消費者物価指数に市場の注目が集まることが多い。物価の上昇圧力が継続するとの警戒感が広がるなか、予想前後の数字は織り込みが進んでいるとみられるが、予想を超えての上昇はドル買いにつながると考えられる。
◆ 児山将のワンポイントアドバイス
米国のCPIはほぼ予想どおりの結果となりました。雇用は微妙でも物価が下がらないのであれば、引き締め路線変らずドル高でしょう。
さて、筆者が気にしていることは岸田文雄首相です。就任後に、明らかに主要国の株価と比べて日本株は大きく下落しました。少なくとも、筆者が相場を始めてから6回首相が変わりましたが、初めての出来事です。海外の新聞の見出しも「岸田ショック」と書かれており、選挙前に増税を打ち出すことに疑問を持つ投資家も多いことでしょう。それゆえの日本売りとなっているとすれば、円売りにもつながります。これはドル円の上昇に拍車が掛かる要因となりますから、10月31日の選挙結果次第で120円を目指す展開もあり得るかもしれません。
10月8日現在 118万3600円