「週に1回くらいは出勤したほうがいい」
――なるほど。先ほどの『プレゼンティーイズム』の弊害が表れるというわけですか。しかし、それは多かれ少なかれ、リモートワークする人すべてに言える問題点ではないでしょうか。
志村哲祥さん「そのとおりです。週に3回、4回の人にも言えることですが、フルリモートの人には特に顕著に表れるということです。さらに深堀りすると、通常であれば休職になってしまうような人が、結構リモートワークで就労を継続しています。たとえば、うつやパニック障害になって通勤できなくなった人や、あるいは癌(がん)とか疼痛(とうつう)とか重篤な身体疾患にかかり、しんどくて会社には行けなくなるような人でも、フルリモートなら勤務を続けられます。
これに関してはフルリモートだから生産性が下がったというわけではなく、不調の強い、プレゼンティーイズムを生じてしまう人でも、フルリモートで勤務を継続してきた、という側面が反映されている可能性があります。ただし、本調査ではそこまで詳しいことは聞くことができていないので、そこは今後もっと検討する必要のある課題です。
――フルリモートになると、職場の人間関係が希薄になってしまいますよね。
志村哲祥さん「その点も生産性を下げる、三つ目の大きな理由と考えています。上司の目も同僚の目も届かないから、ストレスは軽いけど、プレッシャーも軽い(笑)。この研究を始めて、よく『結局、リモートワークはいいのか、悪いのか?』と聞かれますが、こう答えることにしています。『ないよりあったほうがいいけど、たまには、週に1回くらいは会社に行ったほうがよさそうです』」
(福田和郎)