フルリモートの人は体内時計のリズムが不調に
――心身の不調を隠し、無理して出勤すると生産性が下がり、企業の大きな損失になるというわけですね。ところが、週5日のフルリモートワークになると、逆に生産性が下がるという結果が出ました。リモートワークの利点を一番享受している働き方のはずなのに不思議です。どういう理由からでしょうか。
志村哲祥さん「まず一つには、リモートワークの頻度が多いほど睡眠リズムが乱れる傾向が見えています。特に若い人に弊害が出てくるのです。1週間に1度も会社に行かなくなると、夜型の生活になり、夜更かし朝寝坊になります。すると、夜寝付けない、夜中に目が覚める、朝や昼間に眠くなるといった睡眠障害の症状も出やすくなります。
ここからは個人的な仮説の段階ですが、なかなか外出をしなくなってしまう弊害が大きいと思います。人間は、毎日お日様を浴びていないと体内のリズムが狂いやすくなってしまうのです。強い光を浴びることで人間の体は『朝が来た』と認識し、体内時計も整いますが、会社に1回も行かなくなると、結果的に太陽を一度も見ることなく一日を終えてしまうようなことが続出してしまい、体内リズムの不調が生じてしまいます。このリズムの問題が生産性の低下につながっている可能性が現在のところ見出されています。
もう一つの理由は、体調が悪い時でも頑張って仕事をしてしまうことです。たとえば、熱が出て通勤電車に乗るのがつらい時、普通だったら会社を休みますよね。ところが在宅ワークでは、具合が悪くても家で仕事ができてしまう。無理が利くからです。そのことが結果的に、平均で見た場合には、労働時の生産性を下げてしまっている可能性がある。リモートワークで精神的には元気になる。しかし、元気でなくても働けてしまうので、平均を取ると打ち消しあってしまうわけです」