国内外で「無印良品」を展開する良品計画の株価が2021年10月5日、一時前日の終値比120円(5.0%)安の2278円まで下落した。
前日取引終了後に発表した9月の既存店とオンラインの合計売上高(国内)が前年同月比5.2%減と5か月連続の前年割れだったことで投資家に先行きの業績に警戒感が出た。
コロナ禍1年目の2020年、「巣ごもり需要」で食品などが伸びた反動によるマイナスが続いている。9月は生活雑貨や食品など約200品目の値下げに踏み切ったが、前年水準を回復するには至らなかった。
野村證券リポートは悪くなかったのに、投資家に広がる不安
それでは既存店売上高の状況を、詳しくみていこう。良品計画は2021年から、決算期を2月から8月に変更している。9月は2022年8月期の最初の月だったが、スタートダッシュからつまずいた格好だ。ちなみに、2021年8月期連結決算は10月14日に発表する予定だ。
9月の国内既存店とオンライン販売の合計の売上高は、衣服が前年同月比13.1%減、生活雑貨が1.7%増、食品が13.0%減だった。客数は0.7%増と2020年6月以来続くプラスを辛うじて維持したものの、値下げが影響したためか、客単価は5.9%減だった。
20年9月はテレビ番組「ジョブチューン」(TBS系)で無印良品のレトルトカレーランキングが放送されたこともあり、特に食品の売上高が90.5%増と異常に伸びた。野村證券は10月4日付リポートで「価格見直し商品の売り上げ伸張により生活雑貨が好調に推移した一方、食品は前年同月のテレビ放映に伴う特需により反動減となった」「前年ハードルの高さを考慮すれば食品は依然として好調と判断できよう」と指摘した。
確かに、そうしたテレビ番組の影響はあったのだろうが、野村のリポートが投資家に配信されているのにもかかわらず株価が下落した点からみて、投資家間で業績への不安が広がっていることがうかがわれる。
10月5日は日経平均株価の終値が前日比2.2%安と全体としても下げているが、良品計画の終値は2.5%安とこれを上回っている。その後、日経平均の8日終値が5日比0.8%高とやや持ち直したのに対し、良品計画の8日終値は5日比1.8%安と冴えない展開となった。
磨き続けてきたブランド価値を失う恐れ?
良品計画は7月に発表した中期経営計画で、国内の出店ペースを従来の5倍の年100店に引き上げ、郊外や地方に大型店を設ける方針を明らかにした。9月に新社長に就任したファーストリテイリング出身の堂前宣夫氏が、この中計策定に深くかかわったとされている。
ただ、株式市場には故・堤清二氏が率いた旧セゾングループ時代より磨き続けたブランド価値が失われないかとの危惧もある。
SMBC日興証券は9月29日発行のリポートで「出店拡大による成長を想定した中期計画への評価は現時点で難しく、中計や新経営陣の施策への評価は早くても2022年8月期の実績を待つ必要があり、現在は期待のステージとみる」と記した。
10月12日終値は前日比67円安の2260円で、3月18日の年初来高値(2829円)より2割弱低い水準。懸念が期待を上回っているというのは言い過ぎかもしれないが、株価を反転させるには着実な業績改善が必要と言えそうだ。
(ジャーナリスト 済田経夫)