「経営陣のホンネは取得するなら退職しろ」
さて、男性社員から「今、育休を取得したい」と申し出があった場合、経営層のホンネはどうだろうか。「対応できるか」と聞くと、76.3%が「できる」と答えたが、4人に1人(24.7%)が「対応できない」と答えている。その「取得させられない」理由はこうだ。従業員の人数別にみると――。
◆従業員が30人未満。
「従業員が30人未満で、職種的に無理だから。この職業を選ぶなら、覚悟を決めてからやってほしい。自分もそうしてきたので」(経営者、男性)
「人手不足で代わりの人員を用意することができない。育休中だけ他の人を雇うことも実際のところ難しい」(経営者、男性)
「前例がない」(役員、女性)
◆従業員300人未満。
「法制度化されても現状では不可。中小企業ではその意があっても、人の穴を埋めることができなければ対応は難しいです」(経営者、男性)
「経営者が反対しているので」(役員、男性)
「男性に育休をとらせるよりも時短勤務や残業なしで帰ってもらったほうが助かる。会社には『休業制度』があるので(妻が産後ウツなど家庭に支障が出ている場合など)取りたい人は取ればよいと思う」(部長クラス、女性)
「現時点で、産休・育休取得で女性部下が2人同時に1年以上不在。その間の人の補充がされず、自身一人にシワ寄せが来ており、激務で体調を崩している。男性にまで育児休業をされては、残されている者だけが損をする環境。これは組織としての意識改革が必要」(部長クラス、女性)
◆従業員1000人未満。
「前例がない。周囲からの反感が予想される」(役員、女性)
「育児休業などは、仕事の妨げになるのでいらない」(部長クラス、男性)
「経営陣の考え。取得するなら退職しろとなる」(部長クラス、男性)
◆従業員1000人以上。
「自分一人では決定できる権限がない」(役員、女性)
「不平不満が出る。会社を休むと生産性が落ちる。会社がつぶれる」(部長クラス、男性)
「その人しかできないことがある(部長クラス、男性)
かなり、規模の大きな企業でも意識改革が進んでいないことがわかる。
この調査を監修した男女共同参画問題に詳しいジャーナリストの治部れんげ(じぶ・れんげ)さんは、こうコメントしている。
「経営者や管理職の方には、特にこの『男性育休白書2021』をよくご覧いただき、若い世代が望む働き方、ライフスタイルを理解していただきたいと思います。男性育休を通じて彼らのワークライフ・バランスを支援することは、優秀な人材の獲得や定着、彼らにやる気を持って働き続けてもらうために、とても大切なことです。
なかでも特に重要なのは、直属の上司によるサポートです。男性の部下から『今度、子どもが生まれます』『妻が妊娠しました』と聞いたら、『おめでとう』の次に『あなたはいつからいつまで育休を取るの?』と聞いてあげてください。男性育休を『当たり前』と捉える上司や先輩の態度は、若い世代の男性が安心して制度を利用することにつながります。復帰後は職場を信頼して力を発揮してくれるでしょう」
なお調査は、2021年6月11日~6月21日に、全国47都道府県の小学生以下の子どもがいる20代~50代の男女9400人に聞いた。
(福田和郎)