「本当に困っている世帯への現金はバラマキでない」
インターネット上では、今回の矢野次官の投稿内容について、猛反発が起きている。ヤフコメでは経済の専門家などからも賛否両論の意見が。
日本総合研究所調査部マクロ経済研究センター所長の石川智久氏は、論議が起こることに、賛意を示した。
「さまざまな意見があることはとても良いことです。財務省として意見を示すことは建設的な議論になると思います。一方で、海外では成長につながりそうなデジタルやグリーン関連、医療関係には巨額の政府資金を投じて競争力を強化しようとしています。
そうしたなか、日本でも成長産業支援や次世代を担う人材育成については、ある程度財政資金を投じる必要があるでしょう。世界で最悪レベルの財政であるわが国においては、無駄使いは徹底的に排除する一方で、成長分野には資金を投じる、まさに賢い財政支出が求められます」
東洋大学ライフデザイン学部准教授で介護支援専門員の高野龍昭氏も、矢野次官の投稿内容に一定の賛成を示した。
「我が国の政府の財政(一般会計)の悪化を招いている最大の要因は、社会保障関係費の歳出が伸びているためです。バブル期以降の歳入(税収)の停滞にあわせ、人口の高齢化に伴う年金・医療・介護などの高齢者が受益者となることの多い社会的施策への歳出の増大が求められたことが主因で、そこに対してどの政治家も処方箋を示してこなかった実態は否定できません。
岸田政権では介護や保育などの従事者の処遇・給与等に直結する『公定価格』を引き上げたいという政策を打ち出しており、とても重要なポイントですが、そのための財源確保の方策が示されなければ、矢野次官のコメントのように『バラマキ』となる懸念があります。新政権の対処策に注目したいと思います」
一方、エコノミストで経済評論家の門倉貴史氏はこう反論した。
「全国民に10万円を支給したり、18歳以下のすべての国民に10万円を支給したりするなど、生活の困窮度合に関わりなく一律に、あるいは年齢を基準に現金を給付するような政策は、財政支出に見合う経済効果が期待できないので(給付金の多くが消費ではなく貯金に回ってしまうため)実施すべきではない。
しかし、本当に経済支援を必要としている世帯に現金を給付するのは、消費の拡大にもつながり、財政支出に見合う経済効果が期待できるのではないか」