岸田政権の経済政策は「アベノミクス」の修正 「金融所得課税」早くも後退、長年の課題が進展しないワケとは?

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「成長戦略」と「分配戦略」はクルマの両輪

   では、どんな政策を進めようとしているのか――。所信表明では、これまでの会見などで述べてきた「令和版所得倍増」という表現は避けたたうえで、コンセプトとして「成長と分配の好循環」「コロナ後の新しい社会の開拓」を挙げ、実現へのクルマの両輪に「成長戦略」と「分配戦略」を位置づけた。

   このうち、成長戦略は、脱炭素社会の2050年実現に向け、再生可能エネルギーや原発などによるクリーンエネルギー戦略を策定する方針を示した。人材育成など科学技術立国、5Gなど地方のデジタルインフラを整備するデジタル田園都市国家構想、強靱(きょうじん)なサプライチェーン構築による経済安全保障推進などを列挙した。これらは、基本的に従来からの延長上にある。

   岸田カラーといえるのが分配だ。所信表明で「分配なくして次の成長なし」と強調し、下請け取引に対する政府の監督体制を強化するとともに、労働分配率向上へ「賃上げを行う企業への税制支援を抜本強化」させるなどと訴えた。

   また、政府の政策で直接的に実施できるものとして、看護や介護、保育などの現場で働く人の収入増に向け、新たに「公的価格評価検討委員会」を設け、待遇改善を進め、実質的に収入増に結びつけていく考えも示した。

   じつは安倍政権も、トリクルダウンがなかなか広がらないこともあって、政策的に分配を後押しした。岸田首相が言及した賃上げ企業への税制支援は実施してきている。法人税率を引き下げるとともに、「官製春闘」と呼ばれたように、経団連などに圧力をかけて賃上げに努めさせもした。わずか1年の菅政権も、安倍政権からの流れを引き継ぎ最低賃金の大幅引き上げを実施した。 看護、介護、保育の収入増が、岸田政権として新味ある政策といえる。ただ、こうした「エッセンシャルワーカー」の処遇改善には異論がなくても、利用者負担の増加にもつながるかどうか、大きなポイントになる。

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