「ホンダがホンダであるため」の宇宙事業
ホンダの技術がどのようなものか、まだベールに包まれた部分が多いが、今回の事業についての発表では「ロケットの一部を着陸させ、再使用することも想定」と打ち出したのが目立った。
ファルコン9が1段ブースターの回収・再利用などでコストを抑えていることが念頭になるとみられ、このあたりが競争力に大きく関わってきそうだ。
ロケット以外の空飛ぶクルマについても、米ボーイング、米配車大手ウーバー・テクノロジーズ、日本のANAホールディングスなどが参入して、異業種間で激しい開発競争を展開しており、儲かる事業にしていくのは簡単ではない。
そもそも、本業の自動車産業は「CASE」と呼ばれる大変革期を迎え、電気自動車(EV)シフト、自動運転、つながるクルマ化など技術開発競争はアップルといった異業種の参入も含め、激しさを増す。ホンダ自身も2040年にガソリン車の販売をやめ、新車をEV、燃料電池車(FCV)に絞る方針を打ち出しており、そのための巨額の開発投資、設備投資が必要で、宇宙などへの投資余力がどこまであるか、いぶかる向きもある。
それでもチャレンジに踏み出す決断をした。三部社長は4月に就任した際の会見で、「ホンダは、独創性でありたい、というこだわりの強い人材が集まっている会社だ。人の描く夢を大切にし、大きな目標に向かってチャレンジし続ける。その中で、常に本質と独創性にこだわり続ける会社でありたい」と述べた。ホンダがホンダであるために、「宇宙」も必要な選択ということだ。(ジャーナリスト 済田経夫)