中国人富裕層がカジノで豪遊できなくなるかも......
申請に向けて準備が進む3地域では地元政財界の期待は高まるが、IRを巡る前提条件は大きく変わりつつある。
一つは新型コロナウイルスで明らかになったパンデミック(感染症の世界的大流行)のリスクだ。IRの計画は訪日外国人の利用を前提としているが、一たんパンデミックが起きれば国境を超える人の動きは年単位で制限されかねないことが明らかになった。IRが開業する頃には新型コロナウイルスが克服されている可能性もあるが、新たな感染症が蔓延すれば同じことが起きかねず、IRの収支は大きく狂う。
もう一つの変化は、中国で始まった貧富の格差を是正しようとする政治的な動きだ。IRはカジノの収益が施設全体を支える構造になっており、カジノの利用者は中国などアジアの富裕層を最大のターゲットにしている。
その中国では習近平指導部が「共同富裕」をスローガンに富裕層を狙い撃ちした政策を次々に繰り出しており、今後も中国の富裕層がカジノで豪遊できるとは限らない状況になってきている。
巨額の投資となるIR。自治体にもインフラ整備の負担が見込まれ、目算が狂えば事業者と共倒れになりかねない。「賭け」の結果が判明するのは5年以上も先だ。
(ジャーナリスト 白井俊郎)