カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の整備計画を巡り、政府が申請の受け付けを2021年10月1日に始めた。締め切りは2022年4月で、最大で3か所を認定する。
本命だった横浜市は初当選した新市長が誘致撤回を表明し、今回の申請は西日本の3地域となる見通しだ。開業が見込まれる2020年代後半には訪日外国人数が回復して、IRを地域経済活性化の起爆剤にしようと期待は高まるが、果たして狙いどおりになるのか――。
投資規模で群抜く「大阪府・市」 年間売り上げ5000億円見込む
申請準備が進む3地域は「大阪府・市」「和歌山県」「長崎県」。実際に申請する時期は、関係自治体の議会手続きなどを経る必要があるため、2022年春ごろになる見通し。自治体と事業者が共同で申請する仕組みで、国土交通省の有識者委員会が経済波及効果やギャンブル依存症対策などを審査する。
3地域の中で投資規模が群を抜いているのが大阪府・市だ。米カジノ大手のMGMリゾーツ・インターナショナルと日本のオリックスと共同事業体を組み、初期投資額は約1兆800億円に達する。2025年に大阪・関西万博が開催される大阪湾岸の埋め立て島に整備され、世界の富裕層による利用を念頭に置いた三つのホテルなどを設ける計画だ。年間の来場者数は2000万人超、売り上げは5000億円超を見込んでいる。
和歌山県はカナダのクレアベスト・グループと組み、和歌山市にある埋め立て島にマリンレジャーや温泉も楽しめる施設を計画する。長崎県はカジノ・オーストリア・インターナショナルと共同で、佐世保市にあるテーマパーク「ハウステンボス」の敷地内に整備する計画だ。
首都圏で有力だった横浜市は、政府の申請受け付けが始まる直前の2021年8月に実施された市長選を機に方針を転換した。IRを推進していた現職の林文子氏と、直前まで閣内にいた元国家公安委員長の小此木八郎氏がいずれも落選。IR反対を明言して初当選した元横浜市立大医学部教授の山中竹春氏が誘致の撤回を表明した。
林氏も小此木氏も、地元選出でIRの旗振り役だった菅義偉首相(当時)と関係が近く、小此木氏は選挙戦ではIRに反対する姿勢を示したものの、有権者の疑念を拭えず、敗れた。