【7本目】今夏猛威を振るった新型コロナウイルスの感染第5波が、ようやくピークを越えました。緊急事態宣言が解除され、ウィズコロナの段階に入りました。それを可能にしたのはワクチン接種の浸透です。これからは3回目の接種や、積極的なPDR検査や抗原検査を活用しながら、経済活動を徐々に動かしていくことになります。
今回はその一つ、新型コロナウイルス感染後の重症化を防ぐと期待される抗体カクテル療法の開発で話題になった中外製薬(4519)について分析していこうと思います。
抗体カクテルの材料は織り込まれ済み?
昨年(2020年)や今年は、新型コロナウイルスによって株価が大きく上昇する銘柄がたくさんありました。たとえばドイツの新興製薬会社BioNTechなどは、世界各国でワクチンが承認されると、もともと100ドルほどだった株価が200ドルに、その後3回目の接種などの話題が議論され始めると、一時400ドルを超える場面もありました。
コロナ禍で、製薬の需要は非常に大きく、企業にとっても大きなインパクトのある材料になっています。
一方、コロナ患者の重症化を防ぐ抗体カクテルを開発した中外製薬の株価は冴えません。親会社であるスイス、ロシュ社や日経平均株価のパフォーマンスと比較するとかなりアンダーパフォームしていることがわかります。
抗体カクテルのニュースが明るみとなった2020年11月あたりでは大きく株価が上昇しているのですが、その後株価が冴えないということは抗体カクテルの材料はすでに折り込み済みであり、新しいサプライズ待ちの状態と考えて良さそうです。
さまざまな指標を通じてその先を展望する
抗体カクテルによる大きなアップサイドが見込めないとしても、中外製薬は他の製薬会社と比べて魅力的な部分がたくさんあります。たとえば、中外製薬の販管比率の低さや営業利益率の高さなどです。
中外製薬が製薬会社の中でも低コストで広告費や人件費を抑え、利益率を高められているのは親会社であるロシュ社の後ろ盾が大きいと考えられています。ロシュとの連携のもと、営業拠点や工場の統廃合で余剰資産を圧縮するなどして販管費を減らしたり、対象者が増えたり、第3段階の治験の海外分をロシュ社に委託することで研究開発費の効率化を行っているようです。
懸念材料として、2021年通期売上収益見込みの約1割に相当する、ヘムライブラのロイヤルティー収入の減少などがありますが、新薬開発のための工場を増設したり、新しい研究所を新設するなど今後成長を続けていくための投資は惜しみなく行われています。
2020年と比べて、今年の通期見通しはやや成長性に欠けますが、過去5年の決算と財務基盤の強さから、新たな新薬を開発し、さらなる成長を目指していける企業だと考えています。
短期での下げ幅も限定的であると考えたため、9月30日の終値4103円で100株購入したいと思います。
中外製薬(4519)
年初来高値(2021年1月12日) 6435円
年初来安値(2021年5月13日) 3898円
購入時の株価(2021年9月30日) 4103円
取得株数 100株
埼玉県出身。