行楽シーズン、クルマの遠出を控える人も
金融アナリストの久保田博幸氏も、こう警戒する。
「原油価格のベンチマークともいえるWTI先物(編集部注:ニューヨーク商業取引所で取引されている米国の代表的な原油の先物商品)は(1バレル当たり)77ドル近辺の壁を超えそうで超えなかったが、そこを10月4日に突破してきた。次の節目は100ドル近辺となる。今回の原油価格の上昇の要因としては有力産油国による大幅増産見送りが決定したことなどがあるものの、それ以前に世界的なエネルギー価格の高騰が背景にある。
経済活動の回復に伴い電力不足など起きており、石炭や天然ガスの価格が急騰している。このため原油価格にも上昇圧力が加わってきた。今後もさらに原油価格が上昇してくることが予想されるため、ガソリン価格も上昇してくる可能性が高いのではなかろうか。これは当然ながら家計にも影響を与え、物価そのものを押し上げる要因となりそうだ」
三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主席研究員の小林真一郎氏は、こう予想する。
「昨日(10月4日)の米国市場で原油価格は1バレル=78ドル台と約7年ぶりの高値をつけており、今後もガソリン価格の上昇が続くと予想されます。また、原油価格の上昇は、時間差をおいて電気代やガス代の値上がりにつながります。今年8月、全国の消費者物価指数は前年比で0.4%の低下と落ち着いていますが、携帯電話通信料の値下げの影響などで大きく押し下げられており、ガソリンなどエネルギー価格は前年比で5.5%の上昇と大幅に値上りしています。
家計の購買力は物価上昇分を差し引いた実質の所得で決まるため、物価が上昇すれば、個人消費が抑制される心配があります。特に、自動車の利用が多く、ガソリン消費量も多い大都市圏以外の地域での負担が高まります。また、緊急事態宣言が全面的に解除され、これからの行楽シーズンに自動車で出かける予定だった人にとって、ガソリン価格上昇は痛手であり、遠出を控えるケースも増えそうです」
(福田和郎)