誕生のルーツは「古代遺跡」にあった
環境を変えるかもしれない新素材には、意外なルーツがある。ローマや中国の古代遺跡だ。発掘調査で見つかった建造物のかけらが、炭酸化を経て、大理石のような高い耐久性を有していた。それまでコンクリートの炭酸化は、鉄筋腐食の原因になるとされていたが、それを逆手にとって、土木材料グループ長の渡邉賢三氏らは、1万年の耐久性を有する長寿命化コンクリート「EIEN(エイエン)」を開発。知見を応用して、CO2の吸収、固定化に成功したのがスイコムだ。
約15年にわたる開発は、協働の歴史と言える。遺跡から得たアイデアが、デンカの混和材によって具現化された。中国電力との実証実験で、新たに「CO2吸収」のミッションが課され、ランデスの参画によりコストを削減。2019年には海外展開に向けて三菱商事が参画し、21年7月からは、東京ガスとともに、都市ガス機器の使用時に出る排ガスに含まれるCO2の利用を始めた。
スイコムは、今後どこへ向かおうとしているのか――。鹿島では、前もって部材を作るプレキャストだけでなく、現場で打ち込むコンクリートにも応用する未来を描いている。
「コンクリートの需要は、現状では、ミキサー車などで運ぶ生コンクリートによる『場所打ち』の方が、プレキャストより圧倒的に多いです。すでにNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)からの受託業務では、場所打ちでのCO2削減方法や効果を研究しています。名前は変わるかもしれませんが、『スイコム的な要素』を持つ技術を開発したいですね」(渡邉氏)