中台の加盟申請で緊迫するTPP 米国離脱の隙つく中国、対応難しい日本、「経済」だけで解決できない

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議長国・日本にのしかかる「責任」

   米国がそんな状況だから、責任は日本にのしかかる。

   今回の中台の申請について日本政府の反応は、ある意味、わかりやすい。

   中国の申請に対して、

「高いレベル(のルール)を満たす用意が本当にできているのかどうか見極めていく必要がある」(加藤官房長官、17日)
「申請すれば入れるというものではない」(梶山弘志経済産業相、17日)

   と、冷ややかな一方、台湾の申請には

「我が国としてまず歓迎したい。台湾は基本的価値を共有し、密接な経済関係を有する極めて重要なパートナー」(茂木敏充外相、22日)

   と、きわめて好意的にコメントした。

   中国が東シナ海、南シナ海で自国権益拡大に動き、台湾への軍事的圧力も強めていることから、米国を中心に日欧や豪州などを巻き込んで中国に対抗していく構図ができている。経済的にも、台湾は日本にとって4番目に貿易額が多く、また半導体の生産拠点が集中する台湾は日米などのサプライチェーン(部品などの供給網)の重要な位置を占め、経済安全保障上も重要性が増している。こうした流れの中で、外交的に台湾重視の姿勢を示しているわけだ。

   ただ、「一つの中国」は中国にとって「核心的利益」そのもので、加盟国への硬軟交えた働き掛けを強めるはず。TPPは加盟国の1国でも反対すれば加盟できない決まりで、仮に中台のどちらかが先に加盟すれば他方の加盟拒否権を握ることにもなる。

   現実に、経済制度的には台湾のほうが、加盟のハードルは低い。一方、中国という巨大市場は、貿易協定での最大のバーゲニングパワーで、どの国も、中国市場を無視して経済運営はできない。

   日本は、台湾の肩を持つのがいいのか、単純には言えないところだ。中国は日本にとっても最大の貿易相手国で、自動車など企業進出も多く、米中の間で中国の覇権主義に対抗しつつ、経済的に安定した関係を築くという難しい方程式に取り組んでいる。そこに、TPPへの中台加盟申請という新しい要素が加わった。

   2021年は日本がTPPの議長国だ。まずはTPPのルールに即して中台対応していくことになるが、TPPの理念を共有できるか、ここは譲らず中国に対峙する必要がある。さらに、中国の加盟申請を、米国をTPPに復帰させる呼び水にするといった外交の知恵も求められるだろう。(ジャーナリスト 岸井雄作)

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