環太平洋経済連携協定(TPP)をめぐる空気が緊迫している。
中国と台湾が相次いで加盟を申請したことで、政治的な対立の舞台としてスポットライトを浴びる様相だ。日米を中心に中国包囲網構築が進むなか、TPPを離脱した米国は動くに動けず、日本の責任は重大。難しい対応を迫られる。
あわてた台湾、中国に6日遅れで申請
中国が2021年9月16日、TPPに加盟を申請すると、6日遅れて22日に台湾も申請した。
じつは、台湾の蔡英文政権はTPP加盟を熱望してきた。そこで障害になっていたのが、東京電力福島第一原発事故後から続いている一部の日本食品の禁輸だった。食品安全に敏感な世論の手前、解除に動けないでいたところ、中国に加盟申請で先を越された形になり、慌てて追随することになったという。
「中国と台湾は完全に異なる二つの体制だ。台湾は完全な市場経済を採用している。中国の状況がどうであるかは誰もが知っていることだ」
台湾の通商交渉トップ、鄧振中(とうしんちゅう)政務委員(閣僚級)は加盟申請について23日に説明した際、こう中国をけん制した。
これに対し、中国側は「中国は一つしかない。台湾が(TPPに)加わることは断固として反対する」(23日の外務省副報道局長会見)と、強く反発した。
TPPは日米加豪やベトナム、マレーシア、メキシコ、チリなど太平洋を囲む12か国で合意したが、米国はトランプ政権が「米国第一」を唱えて2017年に離脱し、11か国により18年に発効した。
関税撤廃や投資・サービスなどのルールを定めた協定だが、もっぱら関税引き下げ・撤廃に力点を置く貿易協定とは違い、知的財産保護や電子商取引、国有企業の扱い、さらに労働への配慮など幅広い分野のルールを決めているのが特徴だ。