自転車販売大手、あさひの株価が2021年9月28日に一時、前日終値比99円(7.0%)安の1323円まで下げた。その後も下値を探るような展開となっている。
前日、27日に発表した2021年8月期中間単独決算で、最終利益が前年同期比17.7%減の34億円と2ケタ減益となったことが嫌気され、売りが集中した。10月6日の終値は前日比1円高の1290円だった。
利幅の大きいスポーツサイクルが、世界的な需要増のなか、部品調達難などから品薄となり販売が伸び悩んだことが響いた。人件費などの経費が増えたことも減益につながった。2021年2月期はコロナ禍が自転車販売に追い風となり、あさひの業績も大幅改善したが、コロナ禍2年目でややつまずいた。
コロナ禍で自転車需要は増えたものの......
中間決算の内容をみていこう。売上高は前年同期比2.3%増の400億円、営業利益は18.1%減の49億円、経常利益は17.4%減の51億円。供給不足で商品確保が困難となったスポーツサイクルで販売の機会逸失はあったものの、一般自転車からの移行が進む電動アシスト自転車の需要を一定程度取り込んだことで売上高は全体としてはプラスとなった。
しかし、「販売費及び一般管理費」が前年同期比8.8%増の150億円と膨らんだことが利益を圧迫した。コロナ禍の需要増を受けてアルバイトなどの店員を増やしたことで人件費が増えたようだ。2022年2月期の業績予想は据え置いた。
ここで「あさひ」という会社について確認しておこう。1949年、大阪市で滑り台などの子供用玩具の製造販売業として「旭玩具製作所」を創業。その後、子供用自転車の卸売りを手がけ、75年大阪府門真市に一般ユーザー対象の自転車専門店をオープン。「サイクルベースあさひ」という店名の自転車専門店チェーンへシフトしていき、92年に商号を「あさひ」に変更した。
2004年にジャスダックに上場。2007年に東証1部に移った。1997年にインターネット通販を開始し、2010年には中国に初出店。本社は今も大阪市にあり、21年8月期末の店舗数は直営480店、フランチャイズ19店の計499店に上る。21年5月には東京都八王子市に新しいコンセプトのスポーツバイクストアとして「THE BASE 南大沢店」をオープンした。
株価反転のカギはスポーツサイクルの商材確保
コロナ禍で「密回避」の移動手段として、また運動不足を解消するツールとして自転車の需要が高まり、2021年2月期単独決算は売上高が前期比16.0%増、最終利益が84.4%増の増収増益だった。21年3~5月期(第1四半期)も前年同期がコロナ禍で自主休業や営業時間短縮して低迷した反動もあって、売上高は前年同期比21.5%増、最終利益が39.0%増と好調を維持した。
月初に発表している既存店売上高が6月、7月、8月と各月20%前後も前年割れしていたため、第2四半期に入って変調が起きていることは市場に伝わっていた。株価は下落基調にあったが、中間決算で2ケタ減益が発表されたことは投資家のさらなる失望を招いたと言えそうだ。
もっとも、高齢化の進展もあって一般自転車から単価の高い電動アシスト自転車への移行は今後も進むとみられているし、幅広い年代でスポーツサイクルの人気は高まっている。
まずはスポーツサイクルの商材確保が、業績改善、株価反転のカギとなりそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)