本当に医者になりたい人には朗報
「週刊ダイヤモンド」(2021年10月9日号)の特集は「医学部&医者 2021」。この手の特集を何度も見て、「またか」と思ったが、どうも事情が違うようだ。ポストコロナの医学部入試では、エリート男子が医学部離れを起こし、大チャンスが到来というのだ。本来の医師志望者にとっては見逃せない内容だ。
私立大の医学部は対前年比で志願者を減らしたところがほとんだだ。国公立大の志願者数は微増したとはいえ、「全体としては今後医学部は易化する」という見方だ。
数年前から成績優秀層の情報系学部への流出が見られ、私立大医学部の偏差値は下降しているという。また、私立大医歯学部受験に特化したメルリックス学院の鈴村倫衣学院長の「私立大の中堅医学部あたりの実力だと思っていた生徒が、国公立大に合格するケースがここ2~3年で明らかに増えた」というコメントを紹介している。
医学部の偏差値が高いからという理由で医学部を志望していた成績優秀者の層が去ったのは、本当に医者になりたい層には朗報といえる。
特集では、学力&資金不足対策の切り札として、地域枠と同窓会枠の使い方を紹介している。たとえば、2022年入試における新潟県の地域枠は、国立の新潟大学33人のほかにも、順天堂大2人、関西医大2人、昭和大7人のほかに、東邦大5人、東京医大2人、杏林大2人を新設する。
順天堂大では、学費よりも貸与額の方が大きい。私立大医学部に通って「お釣り」がもらえるのだ。9年間既定の進路で従事すれば返す必要はない。県外からの受験も可能だ。
また、かつて「裏口入試」と言われた「同窓会枠」も堂々と表玄関に出てきたという。岩手医大、東邦大、日大などの同窓会枠を紹介している。
今後、国は医者の地域偏在対策のため、一般入試の定員は減らしていく方針だ。それ以外の入試枠に注目する必要がある。「とにかく医者になりたい」なら、地域枠を使うこともリーズナブルな選択かもしれない。
特集では、灘高から東大理三への黄金コースに異変の兆しがあるなど、中高一貫校の医学部シフトについても詳しく取り上げている。コロナ禍は、医学部入試にも影響を与えたようだ。本当に医者になりたい人にとっては望ましいことかもしれない。(渡辺淳悦)