企業は非正規雇用者を使う「旨み」を覚えてしまった
自民党は9月29日の総裁選で岸田文雄氏を第27代総裁に選出した。10月4日召集の臨時国会で岸田総裁は第100代首相に指名された。
岸田新総裁は、「小泉改革以降の新自由主義的な政策を転換する」として、「令和版所得倍増」を掲げている。「一部の人間に成長の果実が集中してしまっている。果実をできるだけ幅広いみなさんに享受してもらう。大企業と中小企業、高所得者層と中・低所得層、大都市と地方の格差を埋めなければならない」と述べている。
このことから、「新自由主義的な政策の転換」とは、富の再分配や格差是正を示していると思われる。そして、「令和版所得倍増」はこうしたと富の再分配や格差是正を、民間の賃上げを「呼び水」することで成し遂げようというものだろう。
だが、富の再分配や格差是正への政策転換は、果たしてうまくいくだろうか。安倍晋三政権時代にも、経済界に働きかけて、賃上げ要請を行っているが、その効果はほとんどなかった。
新自由主義に舵を切った経済活動を修正するのは大きな困難を伴う。すでに、企業経営は新自由主義の下で、非正規雇用者を使う「旨み」を覚えてしまった。
格差はそれによって富を得ているものにとって既得権益であり、その是正には強い抵抗が予想される。岸田首相の手腕が問われる。(鷲尾香一)