「備えあれば迷いなし」という相場格言がある。
日本証券業協会の相場格言集には、「株式投資で最も大切なことは、売買に際しての確固たる自信と決断である。少しでも迷いがあってはいけない。基盤が軟弱であれば、ちょっとしたことにも動揺しやすくなる。水鳥の羽音に驚き、枯れすすきを幽霊と間違えてギョッとする前に、揺るぎない心の備えを固めておけというわけだ」とある。
同時に、まさかの時も動じない資力を蓄えておく必要も説いている。そのココロは、ギリギリの資金で株式投資をしていると、「損してはいけない」と切羽詰まった気持ちでいるため、わずかのことに動揺して迷いが生じるからだ、と説いている。
多くの人が泣いたJAL株
2010年1月のことだ。株主でなくても多くの人が「まさか......」と思った。持っていた株が紙くずになった。ナショナルフラッグのJAL、日本航空が潰れたのだ。JALの経営破たんに泣いた人は少なくないはずだ。
その時から2年7か月経った12年9月19日。東証1部に再上場を果たしたJALは、売り出し価格3790円を20円上回る3810円で初値を付けた。
筆者がJAL株を、最初に取得したのが昨年(2020年)12月21日。コロナ禍とはいえ、再上場後、経営状況がもうすっかり「安定飛行」に入っていたから、1900円で100株を取得した。その後、ナンピン買いを入れて、現在は保有株数300株、平均取得単価は2305円(2021年10月2日現在)になっている。
周知のとおり、新型コロナウイルスの感染拡大で観光業、その足である航空機業界は大打撃を受けている。今夏の第5派による緊急事態宣言では、JALは9月16日~30日に国内線79路線の3126便を減便にした(8月11日の発表ベース)。減便発表後のJALの株価は、2200円近辺にある。このタイミングを、待っていた。もちろん、「備え」をしっかり用意している。
ちなみに、長期チャート(10年)によると、高値は4940円(15年8月4日)、安値は1556円(20年11月9日)となっている。現在(10月1日)の株価(2617円)は、高値4940円の半値2470円を若干上回るところまで戻している。一方、過去10年での安値1556円は、投資格言にある「高値の半値、8掛け、2割引」の1580円の近似値となっている。
9月17日発売の会社四季報2021年4集(秋号)によると、今期22年3月期の「JAL」決算は200億円の赤字込みだが、来期は1035億円の純利益を見込んでいる。
「ウィズコロナ」経済活動の再開に明るい見通し
2019年12月、新型コロナウイルスは中国の武漢で最初の集団感染が確認された。その後、世界的なパンデミックとなり、日本では第5波がようやく下火になってきた。緊急事態宣言は9月30日をもって解除され、年末の第6波の到来が気にかかるものの、感染予防と経済活動の両立を目指す「ウィズコロナ」の段階に入った。
政府は、11月初めには希望者への2回目接種は終了する見通しを発表。初期段階に有効とされる「抗体カクテル療法」や、中等症以上に有効とされる「デキサメタゾン・バリシチニブ・レムデシベル」などに加え、感染初期に有効とされる飲み薬などの新薬開発により治療法も充実してきた。
新型コロナウイルスの治療に、今度こそ道筋が見えてきたことは間違いないようす。経済再開で先行する欧米の動きを参考にしながら、遅まきながら日本でもワクチンパスポートを活用した経済活動の再開を進めていくことになると考えている。
9月21日には、中国の不動産大手、恒大集団の経営不安に端を発して日経平均株価も2万9839円71銭(前日比660円安)と下落している。そんななか、JAL株には緊急事態宣言の解除に伴う人流再開を見込んだと思われる「買い」が入り、この日の株価は2499円(前日比107円高)まで上昇している。
まずは2~3年先の業績回復を見据えて、じっくり株価上昇を待とうと考えている。現時点では、コロナ禍による大幅下落前の、3397円(2019年12月30日終値)での売却を考えている。(石井治彦)
日本航空(9201)
保有株数(2021年10月1日現在) 300株 平均取得単価2305円
年初来高値 2021年3月22日 2759円00銭
年初来安値 2021年1月28日 1811円00銭
直近の終値 2021年10月 1日 2617円00銭
プロフィール
石井治彦(いしい・はるひこ)
投資歴25年。「現物株式取引」と「長期投資」が基本姿勢。情報源はもっぱら会社四季報や日本経済新聞、経済誌など。また、株主総会やIR説明会には、できるだけ顔を出すようにしている。東京都出身。