「東京一極集中が減り、地方でも人材が育つ」
ウェルス労務管理事務所代表の佐藤麻衣子氏は、ジェンダーの視点からこう述べた。
「共働き世帯が増えている点からもとてもいい変化だと思います。転居を伴う転勤により保育園や学校を変えることや、配偶者が離職せざるを得なくなることは、生活設計の面からも大きな負担になります。とはいえ、単身赴任となれば家族の時間が取れないだけでなく、残された側がワンオペ育児となるなど違う形で負担が生じてしまいます。
来年からは男性育休の法改正などもあり、性別を問わず仕事と生活の両立が求められています。リモートワークの普及をきっかけに今までの慣習を見直して、無理なく前向きに働き続けられる職場が増えるといいですね」
主に働き方がテーマのフリーライター、やつづかえり氏は、東京一極集中の解消、地方創生につながると指摘した。
「グループ全社員が対象ということは、NTT東、西、ドコモなど地域の通信インフラを担う会社が含まれ、リモートワークが可能な職種ばかりではないということ。これまでは転勤ありが前提だったでしょうから、それを原則廃止というのはかなり大きな決定です。
全国各地に事業所があるため、これまで以上に地域の雇用を生み出し、その地域で人材が育つという効果が期待されます。地方でも安定的な企業に所属しキャリアアップが望めるとなれば、東京一極集中の解消にもつながります。大転換だけに、課題もたくさん生まれるでしょう。グループ内にはITの会社もあるので、ぜひリモートワーク時代の新しい働き方やマネジメント方法を見出し、他の会社にも知見をシェアしてもらえればと思います」
父親がNTTの転勤族だったという人からは称賛の声が寄せられた。
「私の父は北海道出身で、NTTの北海道勤務でしたが、マイホーム購入直後に東京勤務になり、それから30年間東京で単身赴任でした。父が運動会や卒業式に出たことはほぼなかったです。子どもの頃は、家族のことを大切にしないと思っていましたが、自分が大人になり、父が一人単身赴任して東京で戦っていたと思うと、尊敬しかありません。今は、定年で北海道の実家に戻り、孫と幸せに暮らしています。孫の行事も熱心に参加してくれています。このニュースを見て、もっといろいろな企業が導入してほしい事例だと思いました」
(福田和郎)