関東沖には世界で唯一、3つのプレートがぶつかる地点がある!【防災を知る一冊】

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   9月1日は「防災の日」。1923(大正12)年9月1日に関東大震災が起きてから、もうすぐ100年になろうとしている。また、近年は9月に大型台風が上陸したり、長雨が続いたりして、各地で風水害も発生している。防災、自然災害、気候変動、地球温暖化をテーマにした本を紹介する。

   日本列島に大きな被害をもたらしてきた巨大地震や火山噴火の原因は「プレートの沈み込み」によるものだ。だが、「プレートの沈み込み」なくしては、日本列島は誕生しなかった。

   本書「日本列島の下では何が起きているのか」(講談社)は、「プレートの沈み込み」と水の役割に焦点を当て、日本列島の下で起こっている現象を解説した本だ。

「日本列島の下では何が起きているのか」(中島淳一著)講談社
  • 関東地方には「地震の巣」がある!(写真は、地震で破損した道路)
    関東地方には「地震の巣」がある!(写真は、地震で破損した道路)
  • 関東地方には「地震の巣」がある!(写真は、地震で破損した道路)

日本列島を生んだ「イザナギプレート」

   著者の中島淳一さんは、東京工業大学理学院地球惑星科学系教授。専門は地震学。日本列島周辺で見られる地学現象を「プレートの沈み込み」に結び付けて解説しているのが、本書の特徴だ。

   日本列島の誕生には「イザナギ」と名付けられたプレートが深く関わっているという。1億3500万年前には、太平洋プレートは南太平洋に位置する成長途中の小さなプレートで、その周囲を海嶺に囲まれていた。海嶺をはさんで反対側にはイザナギなど3つの大きな海洋プレートがあった。

   その時代、のちに日本列島の土台となる陸地はまだユーラシア大陸の一部で、その下にイザナギプレートが沈み込んでいた。この沈み込みによって、イザナギプレート上の堆積物が大陸に付加されていった。付加体は現在の日本列島(とくに西南日本)の主要な部分を占める。

   また、イザナギプレートの沈み込みによって、大陸縁辺の日本列島の土台には大規模な左横ずれ運動が起きた。これによって、南にあった北海道西部や東北日本、西日本の太平洋岸が北上し、西日本の日本海側(中国地方や九州北部)と合体した。このとき、日本列島を縦断するように形成された左横ずれ断層が「中央構造線」だ。

   イザナギプレートは沈み込みを続け、約5000万年前までに完全に大陸の下に姿を消した。神話のような話だが、だからこそ、このプレートは「イザナギ」と呼ばれているのだろう。

   その後、太平洋プレートがユーラシア大陸の下に沈み込み始めた。沈み込みながら大陸に堆積物を付加し続けた。これが日本列島の土台をより強固なものにした。

   さらに地殻の変動で日本海が拡大し、東北日本は反時計回りに約25度、西南日本は約45度回転しながら太平洋側に押し出されていき、そこに太平洋側から伊豆火山弧が衝突して、東北日本と西南日本が合体した。「逆くの字形」の日本列島は、1500万年前には原型ができた。

   東北日本と西南日本が合体する際に、両者の間に「フォッサマグナ」と呼ばれる幅約100キロの大地溝帯が形成された。東北日本と西南日本の境界として有名な「糸魚川-静岡構造線」は、この西端の境界である。

日本周辺の6つのプレートと房総半島沖の三重会合点

   プレートについて詳しく解説している。1980年代に研究が進み、日本周辺には、ユーラシアプレート、北米プレート、太平洋プレート、フィリピン海プレートという4つのプレートに加え、オホーツクプレート、アムールプレートというプレートがあると理解されている。

北海道や東北日本はオホーツクプレートに属し、西南日本はアムールプレートに属すると考えられている。

   沈み込むプレートの中で何が起きているのかを専門的に解説している部分が難しいが、ロマンを感じさせる。水が浸透し、マントルが蛇紋岩化するという。

   火山噴火は、マグマが地下深部から地表まで上昇する現象だ。このほかに火山から離れたところで起きる低周波地震は地下のマグマや水の急激な移動によるものと考えられている。

   最終章では、プレートテクトニクスの観点から関東地方の地下で起こっていることを解説している。関東地方はオホーツクプレートに属し、その下に2つの海洋プレート(フィリピン海プレートと太平洋プレート)が沈み込んできる。3つのプレートが接する三重会合点は世界で房総半島沖にしかない。

   だから、関東地方では6つのタイプの地震が発生する。関東大震災は、フィリピン海プレートとオホーツクプレートの境界で発生する地震だった。フィリピン海プレートの深さは20~60キロと浅いため、被害が大きくなる。熱海では12メートルの津波も押し寄せた。1605年に起きた慶長地震では房総半島でも大きな津波被害が生じたことがわかっている。関東地方でも津波をともなう地震が発生した記録があることを知ってほしい、と中島さんは指摘している。

   関東地方には「茨城県南西部」と「千葉県北西部」に「地震の巣」と呼ばれる密集した震源域がある。中島さんは「フィリピン海プレート内の蛇紋岩化が関東地方の地震テクトニクスを支配する」と結論づけている。このエリアでは大きな被害を出した地震は発生していないようだが、油断はできない。

   それにしても3つのプレートが接するのは世界でも関東地方沖だけというのは、何の因果か偶然なのだろうか? 広大な関東平野が発達したのもその恩恵とは理解できるが、災害が起こりやすい場所でもあったのだ。 ますます、首都移転を真剣に議論してほしいと思った。(渡辺淳悦)

「日本列島の下では何が起きているのか」
中島淳一著
講談社
1210円(税込)

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