日本周辺の6つのプレートと房総半島沖の三重会合点
プレートについて詳しく解説している。1980年代に研究が進み、日本周辺には、ユーラシアプレート、北米プレート、太平洋プレート、フィリピン海プレートという4つのプレートに加え、オホーツクプレート、アムールプレートというプレートがあると理解されている。
北海道や東北日本はオホーツクプレートに属し、西南日本はアムールプレートに属すると考えられている。沈み込むプレートの中で何が起きているのかを専門的に解説している部分が難しいが、ロマンを感じさせる。水が浸透し、マントルが蛇紋岩化するという。
火山噴火は、マグマが地下深部から地表まで上昇する現象だ。このほかに火山から離れたところで起きる低周波地震は地下のマグマや水の急激な移動によるものと考えられている。
最終章では、プレートテクトニクスの観点から関東地方の地下で起こっていることを解説している。関東地方はオホーツクプレートに属し、その下に2つの海洋プレート(フィリピン海プレートと太平洋プレート)が沈み込んできる。3つのプレートが接する三重会合点は世界で房総半島沖にしかない。
だから、関東地方では6つのタイプの地震が発生する。関東大震災は、フィリピン海プレートとオホーツクプレートの境界で発生する地震だった。フィリピン海プレートの深さは20~60キロと浅いため、被害が大きくなる。熱海では12メートルの津波も押し寄せた。1605年に起きた慶長地震では房総半島でも大きな津波被害が生じたことがわかっている。関東地方でも津波をともなう地震が発生した記録があることを知ってほしい、と中島さんは指摘している。
関東地方には「茨城県南西部」と「千葉県北西部」に「地震の巣」と呼ばれる密集した震源域がある。中島さんは「フィリピン海プレート内の蛇紋岩化が関東地方の地震テクトニクスを支配する」と結論づけている。このエリアでは大きな被害を出した地震は発生していないようだが、油断はできない。
それにしても3つのプレートが接するのは世界でも関東地方沖だけというのは、何の因果か偶然なのだろうか? 広大な関東平野が発達したのもその恩恵とは理解できるが、災害が起こりやすい場所でもあったのだ。 ますます、首都移転を真剣に議論してほしいと思った。(渡辺淳悦)
「日本列島の下では何が起きているのか」
中島淳一著
講談社
1210円(税込)