最近は「新卒入社」だけでなく、即戦力として採用される「中途入社」が増えている。転職が当たり前となった今、新卒入社と中途入社がともに働きやすい企業はどこなのだろうか。
転職のためのジョブマーケット・プラットフォーム「OpenWork」を運営するOpenWork 働きがい研究所が2021年9月29日、「新卒入社VS中途入社:どちらも満足度が高い企業ランキング」を発表した。
社員の口コミから浮かんでくる入社の形にこだわらない企業文化の実像とは――。
1位の大阪ガス「自社にないスキルは外から」が徹底
OpenWorkは、社会人の会員ユーザーが自分の勤め先の企業や官庁など職場の情報を投稿する国内最大規模のクチコミサイトだ。会員数は約400万人(2021年1月時点)という。OpenWorkでは、企業の評価を「待遇の満足度」「社員の士気」「風通しの良さ」など8つの指標を5段階で評価している。
今回の調査では、OpenWorkに投稿された企業の評価を新卒入社と中途入社それぞれで集計し、評価点に「差がない」企業はどこなのかを中心に分析した。新卒・中途入社ともに投稿数が20件以上あった企業を選び、合計約5万7000件の中から評価が高い順にランキングした。
その結果、1位は近畿地方のガス大手の大阪ガスとなった。2位は米国に本社を置く製薬、医療機器、ヘルスケア関連の多国籍企業ジョンソン・エンド・ジョンソン、3位は携帯電話を扱うキャリアショップの運営を行うベルパーク、4位は大手資産運用の野村アセットマネジメント、5位は総合不動産のオープンハウス。
6位は建設・鉱山機械の小松製作所、7位は建設・エンジニアリングの千代田化工建設、8位は米国に本社を置くコンサルティングのマッキンゼー・アンド・カンパニー、9位は精密加工装置のディスコ、10位は情報システムの日鉄ソリューションズだった=下表参照。
上位にランクインした企業の口コミからは、入社形態にかかわらない人材育成や評価制度など、機会が平等に与えられている点を評価する声が多く見られた。立場に関係なく意見が言いやすいこと、そしてオープンでフラットな風土づくりが行われていることも挙げられている。
たとえば、こんな具合だ。■大阪ガス「中途採用=自社にないスキルは外から補完という合理的な考えが浸透しており、最低限の社内ルールを守っていれば、これまでと違うスタイル、仕事の進め方に対し、細かく言われることはない。人事評価も公平ではあるが、一方、評価の際に社内人脈が必要と思われる面もあり、中途組に対してはある程度社内ネットワークがないことは考慮されている模様。昇格、昇進にそれほど影響はない」(営業、男性)
■ジョンソン・エンド・ジョンソン「人材育成やキャリア開発の機会が非常に多い。社内公募システムや、さまざまなオポチュニティーがあり、若手の抜擢、登用もある。モチベーションと実力がある社員であれば、さまざまな機会を得られやすい。ダイバーシティを強固に推進しており、女性にとっては特により良い会社だと思う」(営業、女性)
■ベルパーク「新卒の人は入社して約1か月の業務研修ののちに店舗に配属、また、中途の人も研修後にトレーナーのもとでさらに研修を受けた後に店舗に配属となるため、安心して入社できる。また、2年目以降に関しても一般クルー向け、店舗責任者向けの研修が多く、さまざまなタイミングで成長することができる」(営業、女性)
「自分次第いくらでも成長できる」小松製作所
■野村アセットマネジメント「営業部隊は野村證券からの出向が多く、野村カラーが強めである一方、運用側は同業他社からの中途が多いので、アセットマネジメント業界特有の大らかな雰囲気がある。野村のよい部分も受け継いでおり、新卒入社すると先輩社員がインストラクターとしてトレーニングを受けることができる」(アナリスト、男性)
■小松製作所「研修プログラムは非常に充実しており、研修センターも石川県小松市にあり、人材育成にとても力を入れている会社だと感じる。建機のトレーニングセンターもあり、技術系でもとても良い教育やトレーニングを受けられる。外部の研修プログラムも提案すれば、受けさせてくれるので自分次第でいくらでも成長できると思う」(海外営業、男性)
■千代田化工建設「入社前の研修制度も整っており、海外研修もある。総合職については、やることをやっていれば上司にあれこれ言われることはない。若い世代も恵まれた環境で成長していける」(営業、女性)
■マッキンゼー・アンド・カンパニー「ファームのミッションとして、プロフェッショナル/高いスキルを有する人材に最高の環境を用意することを明文化されており、実際にそれが運用され定着している印象。トレーニングしかり、個のプロフェッショナリズムに任せて大きな裁量権を与える文化など、すべてが一貫している」(アソシエイト、男性)
■日鉄ソリューション「中途入社の割合が増えてきており、役職者の割合も半々といった印象であるため、新卒中途の区別なく評価され、昇進していると感じる。困ったら助けてくれるという環境であるため、一人で働いているということは感じない」(営業、男性)
■エミレーツ航空「非常に風通しの良い環境で、年齢や国籍に限らず自分の意見を発することができる。自分のやる気次第で、空きがあれば早いうちから早期に昇格に挑戦できる。人任せにしたり、他人に意見を聞いてから慎重に物事を進めたりするような日本の文化と違い、自ら考えて行動できる人がほとんど」(接客、女性)
■三菱商事「人当たりのいい社員が多く、社内の人間関係で困ることはない。若手や中途採用も含め、新たに配属された人間をサポートし、育てようとする文化はある。チームで成果をあげようという意識が強く、チームの連帯意識が高い」(営業、男性)
24位スタバは「社員もバイトもチームワークがしっかり」
■スターバックス コーヒー ジャパン「人を大切にするという理念が浸透していて、人材育成などに関してしっかりしたプログラムができている。また、社員、アルバイト関係なくパートナーと呼び合い、同じミッションを目指しているので、どこの店舗に行ってもチームワークがしっかりしている」(アシスタントストアマネージャー、女性)
■Works Human Intelligence「非常に風通しがいい。新しい会社ということで経営はもちろん、社員全員で作る会社というメッセージが発信されている。立場や経験、年齢に関係なく、自由に意見を言える風土がある」(IT、女性)
■特許庁「入庁時から、審査官への昇進するまで座学が計6か月間企画されているだけでなく、経験豊富な審査官からのマンツーマンの手厚い指導を受けて一人前の審査官になることができます。なので、十分なキャリア開発のカリキュラムがあるのに加えて、審査官への昇進後にも、各種技術や審査に関連する研修もあるので、意欲次第で本人のキャリアアップにつなげることができる体制が整えられています」(特許審査官、男性)
(福田和郎)