伝統工芸に「副業」の力を 中川政七商店×リクルートのコラボイベント

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   「伝統工芸に、新たな風を」――。

   コロナ禍でリモートワークが普及するなか、地域を越えた副業の需要が高まっている。

   2021年9月4日、「ふるさと副業『日本の工芸を元気にするデジタルブランディング』」がオンラインで開催された。地方企業での副業に興味を持つ人々と、伝統工芸メーカーをマッチングするイベントだ。

  • 日本の工芸を元気にする! 副業マッチングイベントの模様
    日本の工芸を元気にする! 副業マッチングイベントの模様
  • 日本の工芸を元気にする! 副業マッチングイベントの模様

知見ある参加者が「悩み」を解決

   参加企業は、雑貨メーカー「中川政七商店」(奈良県)と、同社のパートナー企業で、伝統工芸のものづくりを担う漆琳堂(福井県)、かもしか道具店(三重県)、TO&FRO(石川県)、虎仙窯(佐賀県)、THE(東京都)の全6社。参加者は165人の応募から、36人が選ばれた。

   ものづくり各社が抱えるのは、EC(電子商取引)やデジタルマーケティングまわりの悩みだ。参加者は、事前提出した課題をもとに、初期仮説をそれぞれ提案。グループワークで解決策を練って、改めて第2次仮説を提案した。

   大手雑貨量販店の出身者や、SEO(検索エンジンの最適化)支援企業の社員など、参加者それぞれが知見を生かして、ターゲット設定や認知促進などの具体案をまとめ、約3時間にわたって議論を重ねた。

   イベント終了後は、参加者と企業が副業に向けて、具体的なすり合わせに移る予定だ。

   イベントを仕掛けたのは、リクルートのマッチングサービス「サンカク」。「ふるさと副業」は、通常は個々の企業がマッチングを行うが、自治体との協働で、複数社が参加する合同イベント形式で開催することもあった。サンカク事業の責任者、古賀敏幹さんによると、今回は自治体と異なり、ハブになる企業と協働したケースだという。

   これまで企業ごとや、自治体との共催の場合、集客から当日の運営まで、主にリクルート側が行っている。しかし、今回の取り組みでは、そこで培った要件定義などのノウハウを中川政七商店にアドバイスし、サンカクは集客に専念した。ここから先、企業と参加者のすり合わせも、中川政七商店が中心になって進める。

副業がうまく行くかは「3か月」で決まる

サンカク事業責任者の古賀敏幹さん
サンカク事業責任者の古賀敏幹さん

   古賀さんによると、副業は「スタート直後の3か月」が勝負。企業が副業人材の活用に慣れていない場合には、まず何をゴールにするかを言語化するところからサポートする。企業側と副業人材双方のモチベーションが高いうちに、それをいかにキープするか。コミュニケーションはメールか、チャットか。平日の日中でも「即レス」できるのか。

   働き方の解像度を、互いに高めるかが大切だという。こうしたノウハウは、2014年にサービス開始し、18年から「ふるさと副業」を始めたサンカクならではだ。

   働き方改革と、コロナ禍によるリモートワークの普及で、副業に対するハードルは低くなった。副業人材には、小口化された仕事が割り当てられることが多いが、ふるさと副業では「長い関係性」づくりを目指している。現状認識をしたうえで、企業にあったアプローチを提案する。そうした二人三脚のパートナーを生み出す、キューピッドとしての役割といえるだろう。その先に、企業と個人の新たな出会いが生まれ、地方や伝統工芸の盛り上がりにつながることを、古賀さんは実現したいと考えている。

   イベント終了後、中川政七商店に手応えを聞くと、円滑なイベント運営のため、事前に参加者へ「実際にオンライン購買を体験する」課題を設けたことに加え、Zoomの機能活用や、事前の議論フォーマット準備などを行った結果、「熱量高く」実施できたのでは、と振り返る。

   社内外からの反応はどうか――。同社の広報担当者は「『日本の工芸を元気にする!』というビジョンの実現に向けて、新しい産地支援の兆しが見えたという手応えを得ています」と話す。

   また、パートナー企業についても、「ディスカッション自体が有意義で学びが多かったと同時に、実際に副業の採用に繋がりそうなケースが2~3社ほど生まれています」とのことだった。

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