「いらっしゃい!」
赤のれんをくぐると、鼻をくすぐる焼き鳥の匂いとともに、威勢のいい掛け声が。「冷えますねぇ。いつもの熱燗ですか?」というなじみ客への気遣いもうれしい。
19都道府県に発令している緊急事態宣言と、8県に適用中のまん延防止等重点措置が2021年9月30日に全面解除され、飲食店の酒の提供もOKになった。
しかし、喜んでばかりはいられない。理不尽とも思える「規制」が続くからだ。
感染対策の「認証店」だけが酒の提供をOK
10月1日から、すべての地域の飲食店で酒の提供が認められことになるものの、一気に自由に飲めるようになるわけではない。主要メディアの報道をまとめると、政府は「第6波」の襲来を警戒して、特に飲食店に一定の条件をつけ、行動制限の緩和を段階的に行う予定だからだ。
その方法も政府の方針と、各自治体の対策で異なる。たとえば、東京都の場合と比較すると、こうなる。
【政府の方針】
(1)飲食店の営業時間:感染対策が十分にとられているとして「認証」を受けている店は午後9時までの営業を、「認証」を受けていない店は午後8時までの時短営業を要請する。1か月をめどに対策を段階的に緩和する。
(2)酒類の提供:提供を認めるが、具体的な対応は各都道府県知事が判断する。
【東京都の方針】
(1)飲食店の営業時間:政府方針と同じ。ただし、酒類を提供する場合は、客は1グループ「4人以内」とする。
(2)酒類の提供:感染対策の「認証」を受けている店に限り、午後8時までの提供を認める。「認証」を受けていない店は、提供の自粛を要請する。
ちなみに、都内にある飲食店約12万店のうち、現時点で「認証」されているのは78%にあたる約9万3000店。また、残り2割の非認証店の多くは、もともと自粛要請に応じていないとされているから、10月1日からはほとんどの飲食店で酒が飲めることになる。
神奈川、埼玉、千葉の首都圏3県も東京都と足並みをそろえる予定だが、千葉県では独自に非常に厳しい「認証」制度を設けている。
高度な感染対策に合格した「認証店」には真夜中までの通常営業と酒類の提供を認める。その次のランクの「確認店」には午後8時までの酒類提供を認め、9時までの時短を要請する。そして、それ以外の飲食店には酒類提供の自粛を求めるという3段階に分けた。
熊谷俊人・千葉県知事は記者会見で、
「認証店は要請の対象外として差をつけることで、飲食店の感染防止対策を促していきたい」
と述べたのだった。