話す力は総合力だ!
「週刊東洋経済」(2021年10月2日号)の特集は「無敵の話し方」。プレゼン、面談、営業、会議など12の場面でのスキルをレクチャーしている。
巻頭インタビューで、作家・元外務省主任分析官の佐藤優氏は「読む力があっても話すことが苦手な人はいくらでもいる。そういう人にお勧めなのは書くことだ。書いたものを読み上げる。それを何度も繰り返すうちに、書かなくても頭の中で組み立てて話せるようになる。話す力は総合力なのである」と話している。
話し方の技法といっても、それは氷山の一角に過ぎず、その下には読むこと、聞くこと、書くこと、その人の生き方や価値観、その全部が話し方ににじみ出てくる、とも。
「世界最高の話し方」の著者の岡本純子氏がリーダー層に向けた「話す力」の特別講義をしている。スピーチ&プレゼンのポイントとして4つを挙げている。
(1) 相手に寄り添う「共感力」が重要
(2) ロジックよりストーリーが心を動かす
(3) 体を動かして自分の殻を打ち破る
(4) 記憶に残るフレーズは13文字
ソニー歴代トップのスピーチライターを務めた佐々木繁範氏は「覚悟、情熱、信念のスピーチが人を動かす」と話す。スピーチが苦手な人へのアドバイスとして、こう書いている。
「苦手な人の特徴は、ベクトルが自分に向いている。自分がどう見られるかという不安に意識が集中し、そう思われないようにするのが目的になってしまう。自己開示ではなく誇張や自慢になる。守りの姿勢で自分の殻を抜け出せない。
そうではなく、ベクトルを相手に向けるのだ。聞き手の立場に立って、自分にやれることは何かを考えてスピーチすることだ。かっこよくなくてもいい。十分に感動を与える。このマインドセットがいちばん大事だ」
さまざまな場面でのアドバイスが参考になる。面白いと思ったのは、雑談の効用について、「サイボウズ式」編集長の藤村能光氏が「緩やかな会話がよいアイデアを生む」と書いていることだ。サイボウズには雑談を仕事に活かす文化があるそうだ。
上司がゆるりと部下の話を聞く「ザツダン」の時間が業務時間内にある。リモートワークでも気軽に始まる雑談の場を定例でつくるようにしているという。
「未来予測が難しい現代社会では、正解や結果がわかっている話し合いより、どのような話題が飛び出し、どう展開するかわからない雑談のほうが有意義だと感じている」との言葉は、在宅勤務の人には身にしみるだろう。