「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。
「週刊エコノミスト」(2021年10月5日号)の特集は、「安い日本 超円安時代」。タイトルが、なかなか強烈だ。
菅義偉首相がまもなく退陣し、アベノミクスが名実ともに終わる。円安と株高の陰で、勤労者の賃金は低迷。デフレが解消されない中で、名目の為替レートは円安に張り付き、円の購買力は低下している。安売り大国を覆う不安を編集部がリポートしている。
「安い日本」 超円安時代がやって来る!?
回転寿司大手のくら寿司は、日本では1皿100円(消費税抜き)の商品が主体だが、米国では1皿2.6~3.0ドルと300円前後の設定だ。それでも来店客から「この値段はおかしい。安すぎるのではないか」という反応があるという。
回転寿司などの国内価格が安いこと自体は消費者には悪いことではない。しかし、賃金が先進国で下位に位置し、韓国にも抜かれたと聞けば、受け止め方も違うだろう、と指摘している。
経済協力開発機構(OECD)によると、20年に日本の平均賃金は3万8514ドルで、OECD加盟35カ国中22位と、同4万1960ドルで19位だった韓国を下回った。
円安は購買力の低下に直結する。食料や資源を輸入に頼る日本は輸入物価が上昇して生活を直撃。そこに賃金が上がらない状況が重なれば、暮らしは厳しくなる一方だ。値上げに伴う客離れを恐れる企業は、輸入品価格の上昇を製品価格に転嫁できず、収益を圧迫。賃金を上げられない悪循環に陥っている。「安い日本」から抜け出す道はない、と警鐘を鳴らしている。
渡辺努・東京大学大学院教授は「物価上昇にカルテルの一時容認を」という見解を示している。消費者、経営者ともに「価格は上がるものだ」との常識をつくらなければいけない、と説いている。
なぜ、円はこれほどまでに割安となり、購買力は低いままになってしまっているのか。佐々木融・JPモルガン・チェース銀行市場調査本部長は「他国の物価が日本に比べて大幅に上昇しているのに、為替レートがその分の調整をしなくなってしまったことが背景にある」と説明する。
このままの状況が続くと、日本人にとって海外のモノやサービスはさらに割高になっていくだろう、と危惧している。
コロナ禍がおさまると、ふたたび外国人観光客が日本に押し寄せてくる。外国人にとって、日本は割安だからだ。
新しい首相には、「安い日本」をどうするか、新しい経済戦略が求められている。