「掃除のおばさんになりますか?」
派遣先で、つい仕事が暇なので職場をピカピカに掃除していたところ、女性上司からこう叱られて大ショック。そんな女性派遣社員の投稿が話題になっている。
女性はふだんからキレイ好きで掃除も大好き。よかれて思ってやったのだが、自分でも本業の仕事でミス続きであることは認める。
こんなありさまで、女性は派遣から念願の正社員になれるのか。また、女性上司の発言はハラスメントになるのか。専門家に聞いた。
「正直、本業の仕事がおろそかになりミス続き」
話題になっているのは、女性向けのサイト「発言小町」(2021年9月10日付)に載った「掃除のおばさんになりますか? と言われました」という投稿だ。
「悲しいです。悔しくて眠れませんでした。昨日と一昨日、暇だったので社内の掃除をしていました。掃除が好きだし、キレイになったら上の人に喜んでもらえるだろうと思って一生懸命やったのです。夢中になってやっていたら本業の仕事でミスが多く出てしまい、『掃除のおばさんになりますか?』と女性の上司に言われました。
ただ、役員の人には『キレイになったね』と褒められましたが、それが気に食わなかったのでしょうか。できれば、正社員になれたらいいなと思っています。ハラスメントにあたりますか?」
と、嘆くのだった。
ただし、自分でもこう認める。
「よくよく考えると、初めは総務経理の事務が10でしたが、今は6で掃除やお茶出しが4かもしれません。かといって、仕事ができないというわけでもないと思っています。人がいいというか、上司のやりたくないことをやっています。ここの会社は、人数が少ないので清掃員はいません。私がほとんどやっています。暇な時に掃除していますが、今回は夢中になりすぎました。でも、今さら上司に謝りにくいです」
どうしたら正社員になれるだろうか、という悩みの相談だった。
この投稿に関して、ごく少数だが、「私も掃除が好きだから、気持ちがわかる」とエールを送る回答があった。
「私もお掃除が好きで、手を洗ったついでや、仕事帰りに職場の流し台をシャッと、ひと拭きしたりしています。気持ちいいですよね。周りの人にも気持ちよく働いて欲しいし。あなたは、社員登用をめざす『下心』だと捉えられた可能性はないでしょうか。ミスを挽回して、一緒にこっそりとお掃除も頑張りましょうよ!」
「『掃除は女性社員がやるもの』という流れになるのが怖い」
しかし、圧倒的に多かったのは「本業の事務をおろそかにして、掃除ばかりに夢中になるほうが悪い」という批判の声だった。
「派遣社員は業務内容が契約で決まっています。そして、それに見合った給与を支払っているのです。総務で経理事務をすべきところ、掃除だの、お茶出しだの、雑用をメインにして、本来の仕事でミスをするって本末転倒もいいところ。申し訳ないけど、私が上司ならあなたみたいな人はいりません。それこそ真っ当な『掃除のおばさん』を雇います」
「総務の仕事が10から6に減っているのはかなりマズイですよ。掃除のおばさんを雇いたいわけじゃないのだから、正社員どころか派遣の更新がないかもしれませんよ」
「以前勤めていた小規模のデイケアに、介護福祉士の人がいたのですが、本当に仕事ができなくて、必然的に雑用することが多くなるのです。でも彼女は気にかけない。なぜなら『大好きな掃除に時間をかけられるから』。彼女の要領が悪くて時間がかかる作業を、工夫して時短でできるようにしたのですが、時短した分の時間を掃除に使うのですよ。なので、介護士としての仕事がいつまでもできませんでした。いつもあなたを見ている上司の言葉が本質です」
一方、投稿者が職場で掃除をすることによって、「掃除は女性社員がやるもの」という流れになるのが怖いという意見も多かった。
「私は掃除だ、手料理だと、仕事とは違うことをやたらにやる人が苦手です。その人が勝手にやっているのはいいですが、それを利用する人が必ず出てくるので。一人がやることで『掃除は女子社員がやるもの』みたいな流れにされると、勘弁してよ、と思います」
「特に女性上司は、女性が掃除することに腹が立ちます。女性が掃除すれば、周りも掃除は女性がするものだと考えるでしょう。私も女性の部下には、女性という理由で雑用をしてはいけないと言っています。女性という理由で雑用を頼まれた場合は、すぐに報告するように伝えています。報告を受けたら、頼んだ人を注意します。整理整頓や掃除なんて家でしてください」
「あなたの会社は、掃除の担当はどのように決まっているのですか? 正社員で働く母としては、職場で性差別的な行動をされると、つらいです。掃除の担当が決まっているなら、その担当がする。決まっていないなら、みんなで平等にやるべきです」
「本当の『掃除のおばさん』は厳しいプロの仕事」
また、投稿者の態度も上司の発言も、「清掃を仕事にしている女性に失礼だ」「清掃作業人には資格が必要だ」という批判の声も寄せられた。
「もし本当に清掃員になるのであれば、各種の資格が必要になります。講習会の受講も必要になります。それを知らずに安易に考えている人がなんと多いことか。たとえば、ポリッシャー(編集部注:モーターで円形のブラシやパッドを回転させて床磨き作業を行なう清掃機械)の取り扱いには講習会での指導が必要なのです。清掃員といって安易に考えてはいけません。危険物も取扱いますし、危険な仕事です」
J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部では、今回の「掃除のおばさんになりますか?」と言われてショックの女性の投稿に関する論争について、女性の働き方に詳しいワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに話を聞いた。
――今回の投稿と、回答者たちの反応を読んで、率直にどのような感想を持ちましたか。
川上敬太郎さん「投稿内容の中に気になる点がたくさんあり、含まれている問題は一つや二つではないと感じました。投稿者さんご自身の問題だと思われることも複数あると感じますし、上司や職場の問題だと思えることもあります。 回答者の方々からは投稿者さんに対する厳しい意見が多いようですが、投稿に書かれている内容からすると、暇だという理由で掃除をしたことによって本業の仕事で多くミスが出ているという経緯だけに、投稿者さんの仕事に対するスタンスに厳しい意見が出ることは致し方ないように思います」
――本人も「本業の事務が6割、掃除が4割になってしまった」と認めており、多くの人が「本業がおろそかになるとは本末転倒だ」と強く批判をしています。
川上さん「ただ、暇な時間に掃除していたということであれば、掃除すること自体に問題はないように思います。もし本業と掃除との比率が6対4であることが、暇な時間が全体の4割を占めていることを意味しているのであれば、そのような業務体制になっていること自体が問題だと感じますし、4割もある暇な時間に投稿者さんが掃除をしていることを責める上司の態度にも違和感を覚えます。
一方、本来は取り組むべき仕事があるにもかかわらず、投稿者さんがそのことを認識していなかったり、自分の仕事ぶりに不安があるため、敢えて仕事量を減らしたりした結果6対4になっているのだとしたら、投稿者さんご自身の仕事に対する認識やスタンスを改めるべきです。本業がおろそかになっており、本末転倒だと言われてしまうのも仕方ないと思います」
(福田和郎)