「掃除のおばさんになりますか?」
派遣先で、つい仕事が暇なので職場をピカピカに掃除していたところ、女性上司からこう叱られて大ショック。そんな女性派遣社員の投稿が話題になっている。
女性はふだんからキレイ好きで掃除も大好き。よかれて思ってやったのだが、自分でも本業の仕事でミス続きであることは認める。
こんなありさまで、女性は派遣から念願の正社員になれるのか。また、女性上司の発言はハラスメントになるのか。女性の働き方に詳しいワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに聞いた。
「名もなき雑務」を担わされる女性社員の怒り
――投稿者の批判中に、「職場の中で、掃除は女性社員がやるものだという流れができるといやだ」という意見が多くありました。
川上敬太郎さん「投稿内容を見る限りでは、投稿者さんから、女性だから掃除しなければならないという意図は特に感じられません。もし、職場の掃除は女性が行うものという決まりがあるのだとしたらおかしなことです。また、そういう流れができてしまうのは避けるべきだと思いますが、キレイ好きな人がよかれと思い、自らの意思で掃除することについては、その人が女性であろうと男性であろうと構わないのではないかと思います。
ただ、職場にはさまざまな考え方や立場の人がいますから、自らの意思であっても女性が職場の掃除をすることに対して、否定的な見方をする人がいることを投稿者さんは頭の隅に入れておかれるとよいと思います」
――今回の投稿論争の背景には、職場内の「名もなき雑務」を女性が担わされる問題があると感じます。会社ウォッチでも2020年5月14日付の「お茶出し、電話取り、おみやげ配り...職場の「名もなき雑務」をなぜ女性がやらなければいけないの? ネットで大反響! 専門家に聞いた」で、女性が担わされる職場の雑用の問題を取りあげました。こうした背景についてはどう思いますか。
川上さん「職場内で発生する雑務は事務職の社員が担当することが多いと思います。総務省の労働力調査の2021年4~6月詳細集計によると、事務従事者の数は男性558万人に対し、女性は838万人。女性のほうが比率は高いため、必然的に女性が職場内の『名もなき雑務』を引き受けるケースが多くなっているという面もあるように感じます。
一方、『名もなき雑務』そのものではありませんが、私が研究顧問を務める女性を支援する『しゅふJOB総研』で、就労志向の既婚女性に夫の家事育児について調査したことがあります。
参考リンク:「夫の家事・育児2020:既婚女性はどう評価したか?」(2021年1月4日付)
夫が『取り組んだつもり』でも、妻から見れば『取り組んだことにならない』というギャップが最も大きかったのが『名もなき家事全般』でした。家庭内で『名もなき家事全般』に対する夫の意識が低いことは、職場にも反映され、『名もなき雑務』を女性の役割とするような空気を生み出すことにつながっている可能性はあるように思います」