いきなり迫られる難しい判断 鬼門の「GoTo」再開要望に次期首相はどうする?

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   日本でも新型コロナウイルスのワクチン接種を2回受けた人の割合が50%を超えて、経済活動の正常化に向けた議論が本格化してきた。

   目玉となるのが、需要喚起策「GoToキャンペーン」の再開だ。感染拡大で停止に追い込まれ、菅義偉政権が国民の不信を買う一因となった鬼門の政策だが、ワクチン接種証明と組み合わせて実施すれば、感染抑制と経済の活発化が両立できるという目論みも浮上している。

  • 経済活性化のため、「GoToキャンペーン」再開か?(写真はイメージ)
    経済活性化のため、「GoToキャンペーン」再開か?(写真はイメージ)
  • 経済活性化のため、「GoToキャンペーン」再開か?(写真はイメージ)

ドタバタが国民の不信を招いた

「IMFの経済成長率見通しでは、わが国はワクチン接種と活動再開の遅れから、G7で唯一、下方修正されている」

   日本商工会議所(日商)が2021年9月15日にまとめた緊急要望からは、コロナ禍からの回復の遅れに対するイラ立ちがにじむ。そこには地域経済の再生に向けた方策として、GoToキャンペーンの観光支援事業「トラベル」の再開や、飲食店支援事業「イート」の拡充、期間延長が盛り込まれている。

   日商は中小企業が加入する各地の商工会議所を束ねる存在で、飲食業や観光業に従事する会員も多い。緊急事態宣言下で飲食業は営業時間や酒類提供を制限され、休業を選ぶ店舗も多い。観光業は入国制限で訪日外国人が激減し、国内旅行も県境を越える移動の自粛を行政が要請して観光が手控えられた結果、経営が破たんする宿泊施設も出ている。

   安倍晋三政権がGoToキャンペーンを含む緊急経済対策を閣議決定したのは、1回目の緊急事態宣言が始まった2020年4月。7月に東京都を除外してGoToトラベルを開始した後、10月には東京都も追加した。同月には、GoToイートのポイント付与が始まった。しかし、その後は感染再拡大に歯止めがかからず、菅政権に交代後の12月末にGoToトラベルの停止に追い込まれた。

   感染を抑制して国民の命を守る立場であるはずの政府にとって、GoToキャンペーンは「アクセルとブレーキを同時に踏んでいる」と批判される格好の標的となり、そのドタバタぶりは国民の不信を招いた。

   それでも再開を求める声が高まってきたのは、ワクチン接種が先行した米国や欧州で経済の正常化が進んだからだ。実際にGoToキャンペーンが再開される際には、利用者はワクチン接種を条件とする方向になりつつある。

スマホアプリでワクチン接種済み証明

   GoToキャンペーンの再開に、政府はすでに布石を打っている。

   デジタル庁は国民一人ひとりがスマートフォンでワクチン接種済みを証明するアプリの開発に取りかかっており、2021年内にも実用化する予定だ。これを利用の条件とすれば、感染を抑制しながら経済を活性化させられるのでは、と関係者の期待は高まる。

   日商の緊急要望に対して、加藤勝信官房長官は2021年9月16日の記者会見で、

「(GoToキャンペーンについて)感染状況などを踏まえながら、専門家の意見をいただいて、適切に判断していくべき」

   と述べている。

   GoToキャンペーンを再開すれば、抑制されていた旅行や消費が一気に動き出すのは必至だ。経済界では「リベンジ消費」として期待されている一方、ワクチンの2回接種が先行する国々でも、人の動きの活発化に伴って感染が再拡大することも報告されている。

   再開の是非の判断は、菅氏の後継首相に委ねられることになり、一歩間違えば国民の支持を失いかねない難しい判断をさっそく迫られることになりそうだ。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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