「連合」初の女性会長はオワコンの労働組合運動を変えられるか? 異例ずくめにネットは「頑張れ」コール

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「出る杭」が打たれてもへこたれなかった女性たち

東京都千代田区の連合会館
東京都千代田区の連合会館

   しかし、芳野さんは「労働運動」に微塵も疑いを持たない、前向きの人のようだ。

   連合東京が設立30周年記念(2019年12月)に行った芳野友子さんへのインタビュー「女性組合員の利益代表であることを忘れずに 日本労働組合総連合会 副会長芳野友子さん」をみると、こんなやりとりが書かれている。

「――連合東京の女性委員会に入ってみて、どのような印象を受けましたか。

芳野さん:とにかくパワフルな女性役員ばかりで驚きました。手帳を開けば会議や学習会でびっしり埋まっているのに、私の手帳はSALE(安売り情報)か飲み会(汗)。恥ずかしくて女性役員の前で手帳は開けませんでした。当時、私の会社では結婚・出産退職が当たり前だったのですが、女性委員会には子育ても仕事も組合活動もして...という活発な女性がたくさんいて衝撃を受けました。先輩たちは皆、職場環境や就業実態をきちんと把握し、どうすれば女性の権利が守られ安心して働き続けられるのかと真剣に議論をしていました。私は知識不足で何が問題なのかも理解できず、議論に参加できないことを恥ずかしく感じ、必死に勉強しました。

――連合東京女性委員会の活動のなかで、一番の思い出は?

芳野さん:一番はセクハラ問題に取り組んだことですね。1997年成立の男女雇用機会均等法改正時、セクハラ防止措置が事業主に義務付けられることになりました。連合東京女性委員会は法改正に先駆けてプロジェクトを立ち上げ、休日に集まって勉強会をしたり、職場におけるセクハラの実態を知るため、アンケート調査を実施したりしました。この調査結果はさまざまな労働関係の冊子に掲載され、テレビでも取り上げられました。私たちが行った調査が大変な注目を集め、社会を動かすひとつの原動力になった経験は強く印象に残っています。ほんとうに皆、よく勉強しました。

――連合東京の発足から30年、働く女性の環境は大きく変わり、労働組合への女性の参画も増えてきました。芳野さんはどう受け止めていますか?

芳野さん:私が連合東京に関わっていた頃の女性役員は、男性のポジションを『奪う』ために、一人ひとりが力をつけようと一生懸命に勉強し、リーダーとしての自覚を持ち、常に努力していました。『出る杭は打たれる』というけれど、打たれてもへこたれなかったし、上手にかわす人もいましたし、皆で励まし合いました。今は多くの組織が『女性特別枠』を設け、そこに女性を登用するようになっています。その席に座った女性たちが、労働運動の担い手として役員としての質を高めていかなければ、組合員からの信頼は得られません。

――これからやりたいことを教えてください。

芳野さん:人材育成です。女性組合員から信頼される役員を育てたい、きちんと権利を主張できる後輩を育てたいと思っています。自分がかつて先輩たちと一緒に議論したくて頑張ってきたように、今度は自分がリーダーとして後輩たちに『一緒に活動してみたい』『話を聞いてもらいたい』と思ってもらえたらうれしいですね」

   こういう芳野さんが仮に連合の会長になったら、連合は変わることができるのか。ネット上では、一抹の期待と冷ややかな見方が交錯している。ヤフコメにはこんな声が多かった

「自民党総裁選でも女性が2人立候補している今。女性、男性にとらわれすぎず、マネジメント能力のある人がトップに立てばいい」
「時代環境から連合の存立意義自体が問われかねない難しい時期での登場。勤労者のために、男性だろうが女性だろうが頑張っていただきたい」
「『女性初』という触れ込みが使われなくなるくらい、女性が何にでも進出して、どんな役職に就こうとも珍しくない社会になるといいですね」
「経済界も労働界も、会長は年配の男性でアリバイ的に副会長のうち1人に女性を置いている印象を持っていました。連合の会長が女性というのは新鮮。日本経済団体連合会は連合に先を越された」

   一方、こんな同情の声もあった。

「自民党の総裁選と違って、連合会長は皆で譲り合った結果、この人に押し付けられた感じだから大変だと思うけどな」

   「オワコン」といわれる労働組合運動や連合に対する批判の声もあった。

「大手企業に勤めており、労働組合に強制的に加入させられている。組合費として月に1万円控除されている。会社と闘わない組合は要らない。単に会社と闘うだけでなく、生産性向上や利益率向上のための阻害要因を組合から会社に提案して改善すべきなのに、それをやらない。そして無駄な政治活動やボランティア活動などにお金をつぎ込む。こんな組合は要らない。近年の労働組合の弱体化はそれが原因だと思う」

   芳野さんの手腕に注目したい。

(福田和郎)

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