口コミで国が想定する被害の8割まで減らせる
そこで「科学の伝道師」たる鎌田さんの出番である。「南海トラフ巨大地震」では、どこで起きるのかが市民に伝わりにくい。「西日本大震災」と呼ぶことによって、危機感を伝えている。「東日本大震災と同規模の地震。でも被害は10倍」と説明しているそうだ。
東日本大震災を起こした巨大地震は、今から1100年前の869年に東北地方で起きた貞観地震とよく似ている。それだけでなく、1960年以降に日本列島で起きた地震や火山噴火の発生と規模が、貞観地震が起きた9世紀とよく似ているという。日本列島は約1000年ぶりの「大地変動の時代」に入ったと地球科学的にはみなすことができる、と考えている。
「南海トラフ巨大地震」=「西日本大震災」が身近に起きることとして伝えるために、鎌田さんは以下のことを提案している。
「手帳に20年先のスケジュールを記入する想像をしてほしい。20年手帳の20年目に、南海トラフ巨大地震発生と書き込んでみよう」と講義や講演会で語りかけるそうだ。
企業向けでも同じだ。20年先を見越した長期計画として、本社や工場の耐震補強、津波対策、インフラ整備、工場移転、人員配置、本社機能のバックアップなどの計画を今から始めるように勧める。
こうして「自分の身は自分で守る」考え方と、「20年後に東日本大震災の10倍の被害」が口コミでどれだけ広まるかで、国が想定している被害の8割まで減らすことが可能になるという。