お店が神保町のサロンに!
お店を訪ねたのは、ランチタイムを過ぎた午後2時だったが、カフェはランチやコーヒーを飲食する若い人でにぎわっていた。また、奥の貸しスペースには楽器を演奏する年配の女性客の姿が見え、さらにその奥のギャラリーでは絵本の原画展が開かれていた。
絶えず、人が出入りし、この店が神保町の一つのサロンのような機能を果たしているように思えた。
――お店は5年目に入り、軌道に乗っているようですね。
今本さん「一昨年(2019年)の秋に書店の片隅に小さな絵本バーをつくりました。このバーが好調で、ようやく売り上げが軌道に乗ってきたころに、新型コロナウイルスの流行です。昨年4月は店を閉め、売り上げはゼロになりました。ステイホームのとき、ネット書店ほど便利なものはないですよね。うちの店は売り上げが立たず、本当につらい時期がありました。そのときにサポーター制度を立ち上げたところ、800人以上のお客様が助けてくださいました。とても有難いことでしたし、『これからも頑張らなくては!』と責任を感じました。今後も続けていくためには『あったらいいな』と思っていただける店から、『なければ困る』というレベルまでお店の価値を上げる必要があると思いました。絵本文化への貢献だけでなく、社会貢献、地域貢献にも視野を広げ、本当に喜んでいただけるお店を目指したいです」
――具体的には、どんなことを始めたのですか?
今本さん「子ども食堂(ピノキオ食堂)を始めたり、発達の特性によって社会の中では暮らしづらいお子さんのために『ココロノホンダナ』という取り組みもしています。また、赤ちゃんが泣いてもオーケー、親子で楽しむ本格的なクラシックコンサートなども好評です。授乳とおむつ替えスペースも喜ばれています」
――ところで、お店の本選びで心がけていることはありますか。
今本さん「子どもの絵本というと、教育的に正しいものをいうリクエストがありますが、そればかりでいいのでしょうか。ちょっと、疑問だったりするんですね。そこで、定番はもちろんですが、幅広くいろいろな絵本をご紹介しています。お母さんと子どもでも、手に取る本には違いがありますからね。バラエティーに富んだ品揃えを心がけることが専門店の仕事だと思いますので。ただ、うちは子どもの本の専門店ですが、ドリルや勉強系の本は置いていません」
あまり知られていない子どもの本を紹介したいという思いから、「なかなか手に入らない絵本」コーナーを設けるなど、「定番」以外の児童書を広めたいと工夫を重ねているそうだ。