「これを食べればやせる! 」
「この動きがカラダを引き締める! 」
なぜ、キャッチーなダイエット法は現れては消え、人々の体重は減っては戻るのか?
肥満研究者が出した、減量、キープ、ノーリバウンドの最終結論とは......。
「減量の正解」(エリック・ヘミングソン 著, 下倉亮一 翻訳)サンマーク出版
脂肪は人類の友である
体重を減らすことは、食事制限を数週間続ければできるほど簡単な話ではありません。ダイエット経験者なら、誰しもそのことを理解しているはずです。脂肪を燃やし体重を減らそうとすると、かたくなにカラダは抵抗を示します。なぜでしょうか?
本書では、このように解説されています。
「体は体重が減ることに執拗に抵抗し、脂肪細胞に蓄えられた高カロリー成分を放出するのを嫌います。ダイエットの失敗は、けっして個人の性格が原因ではありません。体の働きを理解できれば、より効果的なダイエットへの扉が開くはずです」
「私たち人間には、特殊な能力が備わっています。胎児のとき、母親の子宮は脂肪を蓄えるのに最高の環境でした。生まれたばかりの人間の脂肪量は、哺乳動物のなかでトップクラス。つまり、脂肪を蓄えることにおいては、人間は生理学的に優等生なのです」
脂肪は大きなエネルギー源になり、とくに乳幼児にとっては生命維持の手段としてすぐれています。体温を維持し、重要な内臓器官を外部の衝撃から守るのも脂肪の働きです。
大量のエネルギーを消費する脳にエネルギーを供給するのも脂肪です。脂肪があまりに少ないと、繁殖力の低下やホルモンバランスの悪化を引き起こす可能性があります。
つまり、カラダが減量に抵抗するのは必然とも言えるでしょう。
ほとんどのダイエットに「問題」がある!
多くの人にとってダイエットの目的は、やせることにあります。ダイエットしたいと思う人は、カラダの内側もしくは外側に不満があるからやせたいと願っています。しかし、ダイエットのほとんどはその場しのぎのもので、計画性に欠けていることが少なくありません。
食事を制限し運動量を増やすと、カラダは脂肪細胞からエネルギーを補給し、脂肪細胞の中身が空になると体重は減少します。これが一般的なダイエットの考え方です。
ダイエットにはさまざまな方法が存在します。なかでも食事制限によるダイエットはもっともシンプルです。ゆえに、「食べる量を減らして運動量を増やす」手法は、唯一効果のあるダイエット法と考えられてきました。
しかし、食事制限が必ずしも最良の方法というわけではありません。減量することとダイエットをすることは、ほぼ同じ意味で使われますが、本当にそれでいいのでしょうか。
また、カロリーだけの問題ではありません。食事制限を簡単に続けて体重が減るならこれほど簡単なことはありません。しかしそれがなぜ上手くいかないのか?意思の弱さが問題でないことは誰もがわかっていることです。
ダイエット成功のカギは、長期的視点、自分自身を理解すること、レジリエンス、マインドフルネスのような心理面が大切であると、本書では説いています。
それにあわせて「運動習慣」の継続を推奨しています。ダイエットに失敗する理由を明確にし、どのようにすれば(リバウンドせず)正しく減量できるのか。ほかの本にないユニークなポイントは「習慣」です。「習慣の改善」を目的としていますから「即効性」は期待できません。ダイエットにじっくり取り組める人は参考にしてもらいたい一冊です。(尾藤克之)