「高すぎる!」アプリ開発者が不満を漏らす「アップル税」 手数料徴収の仕組み改善へ

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   「アップル税」とも称される、米アップルがiPhone(アイフォーン)でアプリ開発業者から徴収する手数料が、曲がり角に来ている。

   アイフォーン上で書籍や音楽などの有料コンテンツの支払いについて、外部サイトでの支払いを容認する方針に転じたのだ。独占禁止法で問題になっていたものだが、果たしてどんな意味があるのか――。

  • アプリ開発者は「アップル税」に不満!(写真はイメージ)
    アプリ開発者は「アップル税」に不満!(写真はイメージ)
  • アプリ開発者は「アップル税」に不満!(写真はイメージ)

15~30%の手数料は高い!

   スマホでの支払い方法は、もろもろあるが、有料アプリの利用料、また音楽や動画、書籍などの有料コンテンツの利用料は、アイフォーンならアップルのアップストア、アンドロイドのスマホならグーグルのプレイストアを通じて支払う場合が多い。

   アップルの場合、15~30%の手数料を徴収しており、「アップル税」とも呼ばれ、「高すぎる」との不満がアプリ開発業者などから出ている。

   2020年8月には、世界的な人気ゲーム「フォートナイト」開発元の米エピック・ゲームズがアップルを米独占禁止法(反トラスト法)違反などで提訴し、注目を集めた。

参考リンク: 「『アップル税』反旗のエピック・ゲームズ 巨大IT『独占論争』激化で法廷へ」(2020年9月5日付J-CASTニュース)

   アップル税について今回、日本の公正取引委員会との間で、手数料徴収の仕組みの改善で合意したもので、2022年に全世界で規約の一部を変更する。公取委は21年9月2日、アップルの改善策の申し出を受け、16年から続けていたこの問題でのアップルへの違反調査を終了した。

   アップルは従来、アップストアでインストールされるアプリについて、アプリ内で追加コンテンツなどを購入する場合はアップストアの決済手段を使うよう規定し、外部で課金・購入できる方法をアプリ内で案内する(リンクを貼る)ことも禁じてきた。

   今回、アップルはアプリ内に外部サイトへのリンクを設け、外部の決済方法へ誘導することを容認するという改善策を提示。公取委は、「事実上、手数料を回避できることになる」として、違反の疑いが解消されたと判断した。

   対象となるのは音楽、電子書籍、動画、ニュース、雑誌を配信する「リーダーアプリ」で、「ネットフリックス」「スポティファイ」「ラインミュージック」などだ。

公取委が重視する「公正な取引」の意味

   手数料負担を嫌う開発者の多くは、アプリ内でコンテンツをあえて買えない設定にして手数料を回避している。その代表が米アマゾン・ドット・コムで、アイフォーン向けの電子書籍アプリ内では購入できないようにしており、消費者はパソコンのブラウザーなどでアマゾンのウェブサイトを訪れて電子書籍を購入する必要があった。

   2022年からアマゾン利用者はアプリからワンタッチで購入サイトに飛べるようになり、使い勝手は改善する。

   もちろん、利用者が払う利用料などの金額は、アップストアを通そうが外部で決済しようが変わらないので、事業者間の取り分の問題ではある。とはいえ、アップルに「吸い上げられていた」分の一定部分がアプリ開発業者に残ることで、新たなアプリ開発やサービス向上につながる期待はある。これが、公取委が重視する自由な競争、公正な取引の意味だ。

   ただし、中小のアプリ開発業者は、自前の決済システムを整える余裕は乏しいとみられ、アップストアに並ぶことによる宣伝効果も考えると、引き続きアップルの課金システムに依存することになるとみられる。

   今回の利用規定の改定はリーダーアプリに限られ、手数料収入の多くを占めるとされるゲームアプリは対象外で、引き続き、外部への誘導は禁止される。米調査会社によると、20年のアップルのアプリ販売額の3分の2はゲームだ。

   ゲームアプリについては、係争中だったエピック・ゲームズがアップルを訴えた訴訟で、公取委の発表直後の9月10日、米カリフォルニア州の連邦地裁は、課金ルールについてはカリフォルニア州の不正競争防止法に違反するとして見直しを命じた。

   アップルのアプリ配信事業が競合企業の参入を阻害する「独占」にあたるとのエピックの主張は退け、いわば「痛み分け」の判決になり、上級審で論戦が続くことになる。

   この問題では米司法省なども独禁法違反の疑いで調査を進めている。アップルのようなネット上の取引の場を提供するプラットフォーマーの市場支配力は強く、たとえば取引条件を交渉で改善する余地がほとんどないことなども問題視されている。

   今回の公取委との合意は確かに前進だが、「アップル包囲網」が弱まることはなさそうだ。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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