五輪期間中はむしろ「認知度」がダウン
スポンサーになったことによって、過去6年間に企業の「認知度」は全体的にはアップする傾向を示した。下のグラフは最高位スポンサーである「ワールドワイドパートナー」と、その次のランクの「ゴールドパートナー」の認知度の推移だ。
ワールドワイドパートナーには、トヨタやコカ・コーラ、パナソニック、オメガ、サムスンなど14社、ゴールドパートナーにはアサヒビール、アシックス、キヤノン、東京海上日動、NTT、NECなど15社が含まれる。
2015年から昨年5月頃のピークまでは順調に認知度が上昇していった。しかし、昨年5月に新型コロナウイルスの第1波が襲来。最初の緊急事態宣言が出されてから下降線をたどる。第2波、第3波と度重なるコロナ禍の猛威の前に、打撃を受ける企業も出たからだ。
結果として、スポンサーとしての認知度は、むしろ2021年7月に東京五輪が始まる頃には下降線をたどってしまった=グラフ参照。
ところで、スポンサー企業の商品も含めて、人々は東京五輪を機に何か購買をしたのだろうか。「オリンピックを機に特に買ったものはない」という人が91.7%に達した。買ったもののなかで一番多かったのが「Tシャツ、キーホルダー、ポスターなどの大会関連グッズ」で2.6%、次いで多かったのが「大型テレビ」(1.7%)だ。1.7%という数字から、野村総研では全国で約90万台が売れたと推計している=下図参照。
こうした結果から、東京五輪はスポンサー企業にいったい何をもたらしたのだろうか。野村総研は、こう結論付けている。
「東京五輪のスポンサー企業であることによる商品購入やサービス利用の高まりは、大会終了時点では必ずしもみられていない傾向。オリンピックのスポンサー企業への効果は、短期的にはみえない影響があると想定されるため、今後も継続的にウォッチしていきたい」
つまり、現在のところ、スポンサー企業であることのメリットを探すのは難しいということのようだ。
なお調査は、主に全国の20歳~69歳の男女計2000人を対象に、東京五輪の開会式翌日の2021年7月24日と閉会式当日の8月8日にインターネットで実施して比較した。
(福田和郎)