反響価格の変化に消費者の不安の表れが見てとれる
首都圏の中古マンションを対象として、不動産ポータルサイトLIFULL HOME'Sに掲載された市場価格および反響価格の推移を確認すると、利便性の高い都心周辺と、コロナ禍でテレワークが進捗したことによって住環境や子育て環境など生活面でのゆとりや個人的な好みを反映した準近郊・郊外に二極化したと言われたことがデータで裏付けられる結果となりました。
特に2020年4月の1回目の緊急事態宣言発出時に最もわかりやすくその反響が表れていることが明らかです。
市場に投入される住宅は新築・中古を問わず、また賃貸物件であるかどうかを問わずに、市場合理性や利便性や利用価値を反映した経済性で価格と賃料が供給サイドによって(半ば恣意的に)決められています。もちろん市場合理性から大きく逸脱した物件価格および賃料を設定すれば、買い手・借り手はいつまで経っても現れずに市場からオミットされることになるため、自ずと上限はありますが、それらも織り込んだうえで価格および賃料は決まります。
つまり、価格決定権は基本的に供給サイドにあるので、需要サイドは提示された価格および賃料に対して是非を述べることしかできないのです(交渉の余地は常にありますが、実際に購入者および賃借人が希望する金額に調整されることはほとんどありません)。
その意味では、今回分析用に使用した「反響価格」は需要サイドの意向を示すマーケットデータとして極めてユニークなデータです。
ワクチン接種は徐々に進んでいますが、変異株の出現やワクチン接種後に感染する「ブレイクスルー感染」も確認されていますから、コロナ禍に対する人々の不安がこのような消費行動に示されたとするならば、より安全で安心な暮らしを送るための政府の(有益な)対策が、これからも求められることになります。(中山登志朗)