【データで見る!】コロナ禍で中古マンションを探しているユーザーの物件選択に変化はあったか!?(中山登志朗)

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反響価格の推移にはコロナ禍の影響が明確に見て取れる

   一方のユーザーが問い合わせなど何らかのアクションを起こした物件の平均価格である反響価格は、2900万円台から3100万円までの価格帯で概ね推移しており、価格のボラティリティは決して大きくありません。

   集計期間中の市場価格との平均乖離率は14.3%で、月ごとに比較すると11~13%程度の乖離率を示しているケースが多く、一般論としては、首都圏においては市場価格よりも1割程度低い価格が、ユーザーが求めている物件価格の平均値であるようです。

   一般に中古住宅を売り出す際、売却想定価格の1割高くらいを設定するなどという話を聞いたことがある方も多いと思いますが、このデータからは図らずもそのような傾向が表れているように思えます。

   ただし、市場価格には大きな変化が見られなかったのに対して、反響価格にはコロナの影響とみられる動きが散見されます。すなわち、コロナ禍前の2019年には反響価格は2900万円台で安定推移しているのですが、緊急事態宣言発出時の2020年4月には一時的に2738万円と2700万円台に下落し、乖離率も市場価格3351万円に対して18.3%と集計期間最大の乖離率を示しています。

   これは一時期見られた都市圏からの避難行動がユーザーの反響に表れたものと考えることができます。実際に、この時期は首都圏郊外に位置する神奈川県箱根町、伊勢原市や千葉県木更津市、市原市などでの物件検索が急増し、さらには静岡県伊東市、熱海市、茨城県土浦市など首都圏外のエリアでも物件検索が拡散・急増しました。

参考リンク:LIFULL HOME'S PRESS 「コロナ禍の第一波・第二波の感染者増に伴い、物件検索が増加したエリアはどこか ~LIFULL HOME'Sデータ分析」

   郊外エリアでの検索や問い合わせ数が増加すれば、必然的に反響価格も下落しますから、上記のような乖離率の拡大が発生したとみられます。2020年4月以前にも乖離率は1月の11.1%から14%台へと拡大しており、4月の18.3%がピークとなっていることもコロナの感染拡大が進むに連れての検索行動の変化に伴うものと考えるのが自然です。

   1回目の緊急事態宣言は5月下旬に解除され、新規感染者数も漸減したことから上記の首都圏郊外および首都圏外エリアでの問い合わせなども相対的に減少しました。反響価格も6月に2961万円に再び上昇しており、コロナの影響が反響価格の変動に明確に表れる結果となっています。

   その後、2020年10月には感染が再拡大し第2波といわれる状況になった時点で、市場価格と反響価格との乖離率は再び18.2%まで拡大しており、新型コロナウイルスの感染拡大の波が反響価格の変化にも大きな影響を与えていることが明らかです。

   なお、首都圏において中古マンションの需給バランスが逼迫したことから、2020年末から市場価格は3400万円台後半から3500万円台へと上昇し始め、これに伴って反響価格との乖離率が15%前後に拡大する傾向を示しています。

   現状でも日経平均株価は3万円前後の水準で安定推移していますから、この状況を背景とした資産付け替え需要の発生などで、投資・実需ともに中古マンションへの需要の押し上げが、コロナとは別の要因として乖離率の拡大の要因となる可能性があると考えられます。

中山 登志朗(なかやま・としあき)
中山 登志朗(なかやま・としあき)
LIFULL HOME’S総研 副所長・チーフアナリスト
出版社を経て、不動産調査会社で不動産マーケットの調査・分析を担当。不動産市況分析の専門家として、テレビや新聞・雑誌、ウェブサイトなどで、コメントの提供や出演、寄稿するほか、不動産市況セミナーなどで数多く講演している。
2014年9月から現職。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任する。
主な著書に「住宅購入のための資産価値ハンドブック」(ダイヤモンド社)、「沿線格差~首都圏鉄道路線の知られざる通信簿」(SB新書)などがある。
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