電動車で「世界の勝者」目指すトヨタ EV巻き返しへ注力するのは次世代の「全固体電池」

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次世代の高性能電池が「全固体電池」だ!

   注目すべきは、次世代の高性能電池として期待される「全固体電池」だ。現在のニッケル水素電池やリチウムイオン電池は電解質に液体を使うが、全固体電池はその名の通り固体の物質を使う。重量当たりのエネルギー密度が高く、充電時間を短くし、航続距離も長くすることができる。

   固体のため、ショートしにくく発火リスクが小さいのも利点で、世界の自動車メーカー、電池メーカーが実用化にしのぎを削っている。

   トヨタは全固体電池の開発で世界の先端を走っているとみられている。今回、電池関連の特許出願件数が世界のトップレベルの電池メーカー6社を抑え、「業界トップクラス」とアピールしたのも自信の表れだ。2020年6月に全固体電池を搭載した試作車を造ってテストコースで走行試験を開始している。

   ただ、現時点で「技術的課題がかなりある」ことも認めている。特に問題なのが電池の寿命が短いこと。電池の充放電を繰り返すと固体電解質が収縮し、イオンが正極と負極の間を通りにくくなって、電池の劣化が早まってしまう。このため、収縮しにくい材料の開発に全力を挙げているという。

   それでも今回、従来からの目標である「2020年代前半に全固体電池をHVに搭載」する計画を改めて示した。頻繁に充電・放電が必要なHVに適しているからだ。また、HVでの電池は充電量の範囲が狭いので、電池が比較的劣化しにくいことから、HV用なら実用化は可能との読みがあるようだ。

   トヨタの電動車販売は2020年度が約215万台で、HVが大半を占めた。30年にはEVやFCV200万台、HVやPHV600万台とする目標だ。

   ライバル他社は、日産自動車が30年代早期に、主要市場の新車はすべてEVを含む電動化車両とする。ホンダは、4月に「40年をめどに(HVも含む)エンジン車を全廃」すると宣言し、米ゼネラル・モーターズ(GM)と提携し、EV車台の共用化を進める方針。欧州ではエンジン車が事実上完全に禁止される見通しで、独フォルクスワーゲン(VW)などがEV専業の方向に進む。

   各メーカーは各地域の規制をにらみながら、合従連衡を含め、対応していくことになるが、いずれにせよ、電池をめぐる競争が大きなカギを握るのは間違いない。トヨタの今回の発表は、電池開発の優位性を語り、出遅れも指摘されるEVでの競争にも勝ち抜けるとアピールするものになった。(ジャーナリスト 済田経夫)

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