35歳、突然1億円を手にしたら、あなたはどう運用しますか? 【その1】 世の中の投資指南書に書いてあること(小田切尚登)

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   明治大学の経営大学院で金融論の講座を担当している。

   今まで主に銀行員などの金融のプロあるいはプロ志望の人に向けて授業をしてきたが、2021年の春学期は金融関係の仕事に従事している学生が少数だったこともあり、内容を大幅に変更して個人の資産運用についての時間を増やすことにした。

   その講義で最初に出した課題は、次のようなものであった。

「35歳のあなたは1億円を突然手にした。あなたは安定した職についているので、家賃も含めてそれを使う必要はなく、他に財産も借金もないとする。この1億円について先を見据えた運用をしていきたい。どのような資産に投資するか内訳を答えなさい」
  • 35歳、突然1億円を手にしたら、あなたはどう運用しますか?(写真はイメージ)
    35歳、突然1億円を手にしたら、あなたはどう運用しますか?(写真はイメージ)
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まず自分の解答をつくりなさい!

   最初に言っておきたいのは、読者のみなさんにも、まずはご自分の解答を作っていただきたいということ。自分で実際やってみることほど大事なことはない。自ら試行錯誤を繰り返すことで本当の実力がつく。

   人の書いたものを漫然と読んでいるだけでは、表面的な理解しか得られない。

   さて、今回の「1億円」についての質問で、まず考えるべきは、大きなリスクを避けたい、ということだ。これから世の中がどうなっていくかは誰にもわからない。思いもかけぬ大惨事が待ち受けているかもしれない。

   地震もあればコロナ禍もあるし、戦争が起きる可能性だって考えておかないとならないだろう。相場は上がるときもあれば下がるときもある。「ドカンと賭けてみたが、相場が下がったので討ち死にしてしまいました」などということにならないようにする必要がある。

   逆に相場が非常に好調で、どんどん上昇を続けていくような状況もあり得る。そのような時には自分もその波に乗らないと意味がない。札束を金庫にしまっておいたとしたら、株価がいくら上がっても不動産価格がどんどん上がっても自分の資産価値は1円も増えない。

   一方でインフレになって物価が上がると、現金の価値はどんどん下がる。そうなったら相対的には自分の財産はどんどん目減りしてしまう。

   これらを考えると、相場が良いときにはその上昇気流に乗りつつ、相場が悪いときも損失をそこそこ抑えていけるというのが目標となる。世の中は波乱万丈なのでまったく無傷というわけにはいかず、場面によっては一定程度損失を被ることも想定していく必要があるが、それでも急に必要となる資金でなければある程度我慢して保有を続けることができる。そうしていけばゆくゆく上昇していくタイミングもきっとあるだろう。そのように時を重ねていき、長期的には増えていって豊かな老後を迎える、というのが理想である。

小田切 尚登(おだぎり・なおと)
小田切 尚登(おだぎり・なおと)
経済アナリスト
東京大学法学部卒業。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバなど大手外資系金融機関4社で勤務した後に独立。現在、明治大学大学院兼任講師(担当は金融論とコミュニケーション)。ハーン銀行(モンゴル)独立取締役。経済誌に定期的に寄稿するほか、CNBCやBloombergTVなどの海外メディアへの出演も多数。音楽スペースのシンフォニー・サロン(門前仲町)を主宰し、ピアニストとしても活躍する。1957年生まれ。
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