災害が続き藩は自立、幕末へ
藩の財政が苦しくなると、幕府に借金をしたが、天明年間(1781~89)移行、幕府は深刻な財政危機によって、例外はあったが基本的に借金を受け付けなくなっていた。その結果、西国の外様大藩(薩摩藩や長州藩など)を中心に藩の自立化が進められた。
藩財政の立て直しのために特産品の専売化などを進めて、雄藩化が図られていった。国替や参勤交代も十全には行われなくなっていった。権威が低下した幕府に代わって朝廷との結びつきが意識された。こうして幕末を招いたのだ。
「災害時こそ大名にとって支配の正当性を演出する絶好の機会」と藤田さんは書いている。災害時の生活保障の手厚さが、日常における両者の信頼関係の強化につながり、ひいては年貢の安定的な確保をもたらしたからだ。
しかし、うち続く災害によってこれが守られず、一揆や打ちこわしが頻発し、やがて江戸幕府は崩壊した。
コロナ禍の現在、災害から民を守れないと見切られた国はどうなるのだろうか。政治の機能不全がポストコロナ時代の歴史の転換をもたらすかもしれない、と藤田さんは書いている。
ひと握りの特権層だけが優遇され、「新自由主義」が生み出した格差による国民の分断が進んでいる。江戸時代の大名がすべて藤堂藩のように手厚く領民を保護した訳ではないが、基本は同じだろう。江戸の大名たちの立派さを知るにつけ、現代の為政者はなすべきことを行っているのか、という不信感が募る。(渡辺淳悦)
「災害とたたかう大名たち」
藤田達生著
KADOKAWA
1870円(税込)